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ムグロールの赤狼 −ミディアミルド物語 4−

  • G-19〜20 (ハイファンタジー)
  • むぐろーるのあかおおかみ
  • 野間みつね
  • 書籍|A5
  • 140ページ
  • 550円
  • 2011/09/09(金)発行

  • ああ──遂に、敵に回ったんだ──


     バルバミラの戦いで力尽きた“恐るべき青い炎”ミディアム・サーガ。長き眠りから目を覚ました彼の前に現われたのは、ひとりの“少女”であった。彼女の存在に戸惑い、その言葉に苛立ちと反発を覚えるミディアム。だが、語り続けるその“少女”に突如として襲い掛かってきた暴風の禍々しさに、ミディアムの体は咄嗟に動いていた……

     野間みつねが高校生の頃から手掛けている、謂わば“準ライフワーク”的な、架空世界の歴史物、第4巻。過去刊行分のリライトを離れ、ようやくの続刊である。

     === 以下抜粋 ===

    「どの辺りかな……」
    「え?」
     ぽつりと洩れてきた言葉に耳を惹かれたマリ・ジェラルカは、淹れ直したばかりのお茶の陶杯を寝台の脇卓上に置きながら、夫の顔を怪訝そうに見遣った。
    「何か仰いまして?」
    「……いや……」
     寝台のへりに腰掛けていた夫は、僅かな苦笑を見せてかぶりを振った。
    「今頃、どの辺りまで行ってるかな……と思って」
    「近衛隊の皆さんのこと?」
     マリが軽く首をかしげると、夫は心なしか曖昧な表情で頷いた。
    「気になりますの?」
    「……まあな」
    「年明け早々に演習だなんて、今迄になかったことですものね。タリーさんはお元気かしら。ベルマンさんも、第六中隊の付属なのに駆り出されたんですって?」
    「ああ……奴は秋の定期人事で一等近衛に昇進してるからな。無役の連中は、得てして員数合わせに使われるもんだ」
    「野戦演習の場合、真剣リランで、実戦さながらに行われますわよね……おふたりとも、お怪我がなければいいですけど」
    「……ナカラ隊長の心配はしないのか?」
     言いながら、マーナ近衛隊副長ノーマン・ティルムズ・ノーラは、妻が淹れてくれた新しいお茶のはいを手に取った。少し香りを楽しんだ後で、ひと口啜る。妻は軽やかな笑い声で応じた。
    「父なら、殺しても死にませんわ。馬にし潰されずに済んだあなたの悪運の強さも、相当なものですけど」
    「……言ってくれる」
    「それより、そろそろメリディン先生がお見えになる頃よ、あなた。この前みたいな無理無体を言わず、大人しく受診なさってくださいね」
    「ん……」
    「まあ、浮かないお顔ですこと」
     妻マリは、憮然たる表情を見せるノーマンの様子に、小さく嘆息した。
     ノーマンは、昨年の終わり、あと十日もすれば新年を迎えるという時分に、馬に足を踏まれて指を骨折、以来、自邸で療養していたのである。
     その馬は、その日の午後に近衛隊の厩へ入厩したばかりの、シラン産の牡馬ぼばであった。これが大層な悍馬かんばで、厩番の言うことを聞かずに散々暴れ回り、夕刻に至って遂に、厩番達を蹴散らして外へ走り出てしまった。
     ところが、馬にとっては不運なことに、丁度そこへ、午後の練兵を終えて自分の乗り馬を牽いてきたノーマンが通り掛かったのである。
     瞬時に事態を把握したノーマンは、咄嗟に馬の端綱はづなをふん捕まえた。その時、左足の甲に、馬の蹄が乗った。構わず地面に捩じ倒し、駆け付けた厩番達に馬を引き渡すことには成功したものの、おかげで彼は、思わぬ大怪我を負う羽目になった。
     そして、明けてデリーラ九年、年迎えの祝い気分も抜けない第一月だいいちげつの三の日に突然野戦演習の実施が命じられ、近衛隊七中隊の内三つの中隊が近衛隊長に率いられて都を離れていった際、彼は当然に同行することが出来ず、デラビダに残ったのであった。
    「馬に倒れ込まれていたら命がなかったんですから、それだけの怪我で済んで幸運でしたわ。皆さんに置いていかれたのは自業自得なんですから、先生に八つ当たりしないでくださいな」
    「ふん、だーれが八つ当たりなんかするかっ。俺はあの薬師くすしが好かんだけだっ。あいつは絶対に藪だっ。この程度のしょぼい骨折、一か月も掛けて治されて堪るかっ、治療代目当てで何のかんのと完治を引き延ばしてるだけだぞ、あいつはっ」
    「まあ呆れた。何て罰当たりなことを」
     マリは困ったように笑った。
    「足指の骨を砕かれたのに全治一か月で済むなら、かなり優秀な薬師様です。置いていかれたのが面白くないことは察していますけど、悪態をくのは私の前でだけにしてくださいね」
     マリは苦笑しながら出ていった。
     その姿が扉の向こうに消えてしまうのを見送って、ノーマンは、つと表情を曇らせた。
    (あいつには……教えられん……)
     彼は、妻が思っているように、野戦演習に参加出来なかったことが不本意、というわけではなかった。寧ろ、決して口には出来ないことではあるが、行かずに済んだことに安堵と言って良いほどの気持ちさえ覚えていた。
     何故なら、彼は、知っていたからである。
     マーナ近衛隊が出掛けていったのが、決して、単なる野戦演習の為などではないことを──。

         ───「ムグロールの赤狼」より

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