仔猫ちゃんといっしょ その2 結婚行進曲
シナモンをまぶしたドーナッツというのは、母星である偉大なるオゴーンにおける、スートリ・マカルシットに似ていると、クラムゼンは常から思っていた。
「善太郎ってホント、甘党だよね」
原住民である偲の言葉に返答をすべく、クラムゼンが口の中のドーナッツを一生懸命咀嚼していると。
ピンポーン
チャイムの音がした。身寄りの無い偲を訪ねて人が来ることは決して無いはずなので、おそらく同じマンションの住人が、夕べ偲と猫のタケコが床の上で戯れていたのが階下に響いたとか、そんなことを言いに来たのだろうと、クラムゼンは立ち上がった。口の周りについたシナモンを指で落としながらドアを開けると。そこには、宇宙警察官であるクラムゼンの直接の上司・ロセナが立っていたのだった。
「先日の通信報告によれば、プリンセス探査機の調子が悪いとのこと。受け取りにきたぞ」
クラムゼンの任務というのは、さる大富豪の下から消息を絶ったプリンセスを見つけることなのだ。しかし、肝心のプリンセス探査機は、スイッチを入れると常にビービーと反応し続けるため、全く役に立たないのだった。
ロセナは探査機を受け取ると、持っていたアタッシュケースに仕舞った。それから彼女は、ついでというように、言葉を発する。
「ところでこれは、私的な用件なのだが」
私的な用件! そう聞いて、クラムゼンの背中が毛羽立った。宇宙警察官になって以来、ずっと恐れてきた言葉だった。私的な用件!
こちらのブースもいかがですか? (β)
七等星文庫 紅茶会事変 翡翠色の翡翠 オービタルガーデン まりあ骨董 豆塚エリ@こんぺき出版 ラズリラズリ 猫島珈琲 しばいぬしるばー COLOR DROP