夏空
小3の夏休みの前日。終業式の日に、彼、田添涼太は教室にいた。新学期になったら教室で一緒に勉強します、と紹介され。その日はそのまま帰って行った。
ひょろりとした痩せ型で、静かな雰囲気の子だった。
私は家に帰って、母に報告した。転校生が来るんだって、と。
「知ってる」
「え、なんで?」
「田添涼太君でしょ。あんたと同じ通学班になるから、お母さんが挨拶に来たよ」
テーブルの上に手土産だというフルーツゼリーが置いてあった。
通学班というのは、朝、家が近い子供たちが集団になって通学するための班だ。
夏休みには通学班単位でラジオ体操やイベントがある。
だから彼は、私の班で一緒にラジオ体操に参加することになった。三年生は私と彼だけだった。
「同じクラスなんだから、話しかけてあげるのよ」
ラジオ体操の朝、母がそんなプレッシャーをかけながら私を送りだした。
そんなことを言われても、子供同士だからって気が合うとは限らないし。なんで私がそんな気遣いをしなきゃいけないの? そう思いながらも、小学生女子ならではの生真面目さと責任感から、私は彼に話しかけることにした。
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