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【緑赤本】Man in the Middle

  • D-24 (2次創作)
  • まんいんざみどる
  • かみむら おうか
  • 書籍|A5
  • 40ページ
  • 400円
  • http://www.pixiv.net/novel/sh…
  • 2014/7/6(日)発行
  • 緑間がオーストラリア研修から帰ってきて赤司と再会する話が中心の短編集です。
    それぞれの話が微妙に連結しております。赤司視点にしても緑間視点にしてもなぜか赤緑っぽいですが、スピリッツは緑赤です。ぬるいR-18もあります。

    本文サンプル******************

    1, Polling




    「で、ワインは飲めるのかい?」

    昨夜の夕食時、ワイングラスを手にしたまま、教授が質問してきた。緑間がこの旅行中、食事に合わせる飲み物として炭酸水しか飲んでいなかったためだろう。

    緑間はアルコールで酔う時間を無駄に思う人種だった。下戸というほどではないが、好んで飲みもしない。だから、ワインは嫌いでも好きでもない、アルコールの一種類だという認識しかなかった。

    「嗜む程度ですが」

    「じゃあ明日、帰る前に寄り道しよう」


    車窓からは、人工の建物が見えなくなって久しい。

    道には信号がなくなり、減り続けた車線は一本になった。その一本道をタクシーはひたすら直進していた。

    メルボルン出てから三十分は経っただろう、と腕時計を見ると、四十分だった。

    助手席に座る緑間の隣で、運転手は鼻歌を歌いながら運転していた。イタリア語のようだった。同じ曲を何度も歌うのでメロディーをすっかり覚えてしまった。

    緑間は窓の外を見た。等間隔で並ぶ街路樹も不均等な林となり、その林の間に羊用の牧草地が延々と広がっていた。遠くうっすらと見える山の麓まで、牧草地は続いているかのように見えた。

    ――もしかして、これはぼったくりタクシーというものではないだろうか。

    外の景色を見ながら、緑間は頭の片隅でそんなことを考えた。そんなことを考えてしまうほど、タクシーはひたすら直進し続けていた。

    これほど直進してもまだ道は続いていた。オーストラリアの大きさと、日本の小ささを実感せざるを得なかった。

    バックミラー越しに後部座席を確認した。教授は後部座席で静かに眠っていた。乗車時に運転手へ行き先を告げると、到着まで寝るから起こさないでくれ、と言われていた。

    運転手が、ヤラバレーはまだ先だぜ、と笑った。外やバックミラーを続けて見ていた緑間に気づいたようだった。

    「そんなに楽しみかい? 兄さん」

    「どちらでもないな」

    なんじゃそりゃ、と運転手が笑った。

    オーストラリア研修の最終日、ワイン好きの教授のお供で、ワイナリー見学に行くことになった。


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    2, PKI = Public Key Infrastructure

    (内緒のサプライズ改題)


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    3, Man in the Middle




    休日は平日になることがほとんどだが、その日は偶然日曜日が休みになった。

    調べたところ、店は十時から開店するところがほとんどだった。人ごみは苦手だ。人が出てくる前に買い物をすませてしまおうと、紫原は現在住んでいるアパートの最寄り駅、渋谷駅から銀座線に乗り込んだ。

    つり革につかまって、うとうとしている間に新橋駅に到着していた。スマートフォンで地図を表示しながら目的の店へ向った。

    紫原の狙い通り、開店十五分前ということで、忙しく移動する開店準備の従業員以外の買い物客は、まだほとんどいなかった。もともと新橋はビジネス街なので、休日は平日ほど人出はないはずだ。

    ほんと赤ちんは運がいいよね。

    今日は赤司の誕生日プレゼントを買いに来ていた。購入目的品は生ものだったので日数を置けない。しかし、今日買ったものを明日に提供するのは、まったく問題なかった。



    「あめだきの豆腐?」

    紫原の脳裏に、飴で炊き込んだ豆腐、というイメージが浮かんだ。

    何それ甘そう。ってどんな豆腐よ?

    「天気の雨に、水が流れ落ちる滝で、雨滝」

    赤司は紫原の想像を綺麗に洗い流した。

    「ふうん雨滝ね。で、それがいいの」

    「ああ」


    紫原の勤務先は銀座のケーキショップだった。店内は当然、そこらじゅう甘い香りが漂っているし、店の入り口すぐのところには、色とりどりのケーキがショーケースに並んでいる。赤司はこの店の焼き菓子が気に入っており、取引先への差し入れに利用していた。店内にイートインスペースもあるので、そこで食事をしていくこともあった。今日も、ついでに食べていくよ、とアップルパイを注文していた。それは砂糖を使わずりんごの甘みだけを使用して作られていた。赤司は自分で食べる時はいつもそれを注文した。


    赤司が訪れた日、紫原は十日連続勤務に突入していた。洋菓子店が総力を挙げる一大イベント、クリスマスを控えているので、店の従業員の休日サイクルは可能な限り引き伸ばされていた。

    「ずいぶん疲れているようだな」

    赤司さん来たよ、と同僚に声を掛けられ、紫原は接客に出向くと、顔を合わせて開口一番に言われた。

    「赤ちんに言われたくないしー」

    赤司はその日も目の下の隈が青黒くしていた。前の週、同じようにイートインを利用した赤司は、食べている最中にアップルパイを枕に眠ってしまっていた。大丈夫かと肩を揺すって起こせば、頬に煮リンゴをつけたまま、眠るに最適な空間だなここ、と笑っていた。

    「クリスマス前のケーキ屋は戦場だな」

    「ほんとそーだよ。俺ですら脚パンパンになるもん。――あ、赤ちん誕生日じゃん」

    クリスマス、赤司と来れば条件反射的に思い出せた。クリスマスの五日前が赤司の誕生日だった。

    「そういえばそうだな。俺ももう二十六か」

    「食べたいものある?」

    紫原は店内のケーキを指したつもりだった。従業員特典として、好きなケーキを一日一個までは無料で食べることができた。最初は嬉しいが、だんだん利用しなくなる特典の一つだった。

    しかし、赤司はそれを華麗にスルーして、アメダキの湯豆腐が食べたい、と言ってきた。

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