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【ハイファンタジー】【2次創作】【BADOMA】小説BADOMA 血塗られた伝説 3/5

  • B-55〜56 (ハイファンタジー)
  • しょうせつばどま ちぬられたでんせつ ごぶんのさん
  • 野間みつね
  • 書籍|A5
  • 124ページ
  • 450円
  • https://mitsune.jp/Books/bado…
  • 2015/10/10(土)発行
  • 表紙・人物紹介画 高井玖実子(タカイクミコ)

    俺の言うことなんて信用出来ないってのか――俺も所詮は黒魔道士だってことか!


     ランガズム大陸を南下して砂漠地帯へやってきたシフォロン達は、ひとつ目の化物一族に破壊されたチャネガ村の、生き残りの人々が隠れ住む洞窟を訪れた。そこで出会った村長の娘セシルの願いをみ、化物によって石にされた村長を救うべく砂漠の“神殿”に向かった八人は、そこで、古代文字のしるされた銘板めいばんを発見したが……

     1990年に株式会社アスキー(当時)から発売されたMSXコンピュータRPGコンストラクションツール「Dante」に収録されていたサンプルゲーム『BADOMA 血塗られた伝説』のノベライズ作品、全5巻予定の第3巻。
     元ゲームを御存じない方でも、普通に“何か「剣と魔法」のファンタジーっぽい”作品として読むことが可能

     全巻完結しました。
     続刊情報等は、こちらの概要アイテムを御参照ください。

     === 以下抜粋 ===

    「……実は、わたし達は、チャネガから逃げてきたんです」
    「逃げて……?」
    「ええ……ひょっとして、皆さん、村を御覧になりませんでした?」
    「見ました。でも……」
    「……つい先日のことのような気がします」
     娘は半ば独りごつように呟いた。
    「村が、襲われたんです……突然、沢山の化物がやってきて、無差別に人を殺し始めたんです」
    「化物……もしかして、ひとつ目で、黒い羽を生やした細身の化物ではありませんか?」
     シフォロンの問い掛けに、娘は頷いた。
    「ええ、そういう姿の化物も居ました。でも、他にも色々居ました。おおきな目に手足を生やしたような化物や、骨だけの化物、まるでミイラのように干涸らびた死体まで……」
     語る声が小さく震える。
    「みんな、必死で戦ったんです……でも、駄目でした……わたし達は隙を見て逃げ出し、どうにか此処に隠れたんです」
    「そうだったんですか……」
     娘は口を閉ざして頷くと、近くの枝穴に歩み寄り、その奥に声を掛けた。
    「ラティアさん、旅の方が八人お見えになったんですけど、そちら、泊めてさしあげられませんか?」
    「八人? そりゃまた大勢だねえ」
     言いながら、年老いた女性がそこから姿を現わす。
    「ようまあ此処を見付けなさったねえ。まあ、八人にはちと狭いかもしれんが、我慢しとくれ。安くはしとくよ、セシルさんの紹介じゃしね」
    「セシルさん……と仰るんですか」
     思わず呟いたシフォロンの声に、娘は、「あ、済みませんでした、名乗りもしないで」と軽く頭を下げた。
    「はい、わたし、セシルと申します。……こちらのラティアさんは、村で一番繁盛していた宿屋の女将おかみさんだったんです」
     娘は、くすっと笑った。
    「こっちに来てからも、旅の方が来たら泊めるんだからと、一番大きな〝部屋〟を使ってるんですよ」
    「現に来てらっしゃるでしょうが、セシルさんや」
     腰の少し曲がった老婆は、ケラケラ笑った。
    「この間もひとり、今度は八人。ラティアばばの目は正しかったろ」
    「そうですね。それじゃラティアさん、宜しくお願いします」
    「あいよう。──気ぃ付けてはいりよ、暫くは天井が低いからね。そこののっぽの兄ちゃん、気ぃ付けんと、頭ぶつけてクルクルパーになるよ」
     そう注意した老婆が、先に立って穴の中へ入ってゆく。八人はその後に付いていった。確かに通路は狭くて低い。「のっぽの兄ちゃん」黒魔道師タンジェが憮然とした顔で体を屈めているのを見て、タロパの戦士クニンガンは笑いながら「タンジェ、頭、打たないでね」と言った。
    「いいよな、お前は……」
     タンジェがぼやく。
    「つくづく、人間って奴は、こういう時には不恰好に出来てるぜ……」
    「人間一般に掏り替えないでくれる?」
     後ろから声がする。タンジェはムッとしたように振り返ったが、その拍子に天井に思い切り頭を打ち付け、思わず蹲ってしまった。
    「くっ、くっそーっ……いってぇ……」
    「気を付けなさいよ。あんたってホンっトに恰好悪いんだから」
     元王女ロココ・リナは少しもいたわりの色なくのたまい、天井に右手を伸ばした。
    「あたしなんか、こーんなに余裕あるもんねー。一緒にしないでほしいわねー」
    「うるさいっ。好きで背を伸ばしたわけじゃないっ」
     ぶすっとした声で呟いたタンジェは、そろそろと立ち上がり、また頭上を気にしつつ歩き出した。ロココが当たり前のような顔でその後ろに続く。……彼女は、この旅の間に、タンジェを〝突っ突く〟ことに愉しみを見出すようになってしまったらしい。その証拠に、しょっちゅうタンジェの後ろを歩く。そこを自分の定位置にしてしまっているのだ。〝突っ突かれる〟方は好い迷惑だが、今クニンガンが笑っていることでもわかるように、傍で見る他の仲間たちにとっても一種の娯楽と化している側面は否めなかった。つまり……誰もロココを咎めようとしない……のである。
    「ま、そればっかりは確かに、親を恨むしかないわよねー」
    「……」
    「でも頭打ってパーにならないでよ。魔道師なんて、パーになったら、ぜーんぜん取り柄ないんだし」
    「うるさいっ!」
     カッとなって振り返った拍子に、またしたたかに頭をぶつける。唸り声を上げて蹲るタンジェに、ロココは無情にも笑い転げた。……が、相手が今度は頭を抱えてなかなか立ち上がらないのを見ると、流石さすがに笑いやめ、些か心配そうに「ちょっと……」と覗き込んだ。
    「ねえ……ちょっと、大丈夫?」
     タンジェは、蹲ったまま目を閉じて動かない。ロココはフッと不安になった。打ち所が悪かったのだろうか──
    「ちょっと! タンジェってば! どうしたの!? しっかりし──」
     慌てて前に回って肩を揺さぶりかけ──
     ぐっと言葉を喉に詰まらせる。
     相手がパッチリと目を開けて彼女を見上げ、ベロリと舌を出したのである。
    「──あんたって人はあっ!!」
     叫ぶが早いか、ロココは右手を翻した。
     バッチーン!!
    「知らないっ! 心配して損したわっ!!」
     プンプンしながら行ってしまう。流石に吃驚びっくりしたらしいクニンガンが駆け戻ってきて、蹲ったままのタンジェに声を掛けた。
    「だ、大丈夫?」
    「……舌、噛んだ」
     掌の跡も生々しい頬を押さえながら、タンジェは呻く。三度目の下賜であった。

         ───「第八章 セシル」より

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