君の首を絞める夢を見た。
果てしなく広がる夜闇のすべてを照らし出す光は存在していない。
けれどもその隙間を埋める物質があるのなら。
***
海岸線沿いの古い県道ですれ違う青年に声を掛けると、彼は「夏」と名乗った。
時刻は真夜中の25時。耳に届くのは潮騒と、青年が連れた老犬の息遣いだけである。
よれよれのTシャツと、漂ってくる油絵の具の匂い。
ある夏のひと夜に出会った、青年と少年、そして犬の物語。
「きみの名前は?」「……冬で、いいです」
収録作「閉じた光」あらすじ球技大会を控えた高校の昼休み。
クラスメイトと共にバスケの練習をしに体育館を訪れた佐藤悠基は、
そこでひとりの先輩の姿を目に留める。誰よりも美しいレイアップシュート、
周囲の人間からは明らかに浮いた、目立つ白に近い灰色の髪。
彼に興味を持った悠基は、友人の鈴木一彦と共に彼のことを探り始める。
校内でも有名な「美月先輩」とは、一体どんな人物なのだろう。
収録作「青空のわけ」あらすじ
「あれ、今週は楓ちゃんが掃除当番なの?」
週変わりの掃除当番。グラウンドでひとりイチョウの葉を掃く楓のもとを訪れ、
楽しそうに話をする同級生の桂。大人びた風貌と相反するその幼い言動に、
楓は次第に桂の存在を好ましく思っていく。初対面、別のクラスの桂が
毎日楓に会いに来るその理由とは。
「イチョウの葉が全部落ちたら、教えてあげる」
収録作「葉が落ちるまで待っていて」あらすじ歩行者が落とした鍵を拾った高校生、近所に引っ越してきた陰気な少年、
同じバイト先で働く先輩後輩……
様々な「ふたり」という関係性に焦点を当てた、全10編の短編作品集。
逸青さんと青司くん|斎田と三津谷|光明寺とぼく
岩村さんと裕文くん|ナツさんとフユ|美月先輩と佐藤くん
楓ちゃんと桂|司さんと静哉くん|陽先生と千影ちゃん|アキとハル
【現代|日常|高校生】
■目次
01.奏 ……
sample 02.曹達水は憂鬱 ……
sample 03.星の見えない望遠鏡 ……
sample 04.嵐の後で ……
sample 05.閉じた光 ……
sample 06.青空のわけ ……
sample 07.葉が落ちるまで待っていて ……
sample 08.Longway to ……
sample 09.閉架書庫の神様 ……
sample 10.シニフィエに名付ける時に ……
sample ※すべてが読切の短編となっております