栃木県宇都宮市。ギョーザが有名だけど、町はさびれて殺風景。湿った風の中でセミが鳴いている。
十三歳の男子中学生・青柳青葉(あおやぎあおば)は、夏休みを宇都宮の叔父・恵(めぐむ)のところで過ごすことにした。母親の再婚話に、担任によるケータイの没収、文化祭の劇、東京から逃げたい理由はいくつもあった。元バレエダンサーの恵は独身で無職、くたびれた様子なのになんだかもてる四十歳。けれども、自分は死にかけていると言ってはばからない。
ある日、冷蔵庫の故障と妖精・パックの幻影により、青葉は恵とセックスしてしまう。「とんでもないことをやらかしたと思ったのに、僕も叔父さんもまるでふつうだ。世界はぶっこわれない」死にかけの叔父を抱くということは夏休みの自由研究になり得るか? ところでギョーザは蛹に似ている。
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公式アンソロジー「和」に寄せた『講和条約と踊らない叔父さん』は本作の習作/導入的な扱いです。よかったら試し読み的にご覧ください。