こちらのアイテムは2020/5/18(月)開催・Text-Revolutions Extraにて入手できます。
くわしくはText-Revolutions Extra公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

【2次創作】Interview with...【SoundHorizon】

  • 草津-35 (ハイファンタジー)
  • いんたびゅーうぃず
  • 麻乃まめ
  • 書籍|その他
  • 24ページ
  • 200円
  • SoundHorizonの二次創作です。

    ノエルとmariemarie*の出会いから渋谷公会堂までの話。
    彼らの物語を、冬の人が観測していたらいいなあと思ってできた本です。

    黒い手帳を模した、B6サイズの手製本です。



    【試し読み】
     暖かい日差しのなかで、わたしは外のカフェテラスに座っていた。冷たいカフェラテが喉元を過ぎて行くのが心地よい。気になる記事だけ目を通しながら、雑誌を斜め読みしていると、向かいの椅子に重そうな鞄がどさっと置かれた。その音に反応して顔をあげると、待ち合わせをしていた彼女が不機嫌そうな顔をしてこちらを見ていた。
    「ノエルって知っています?」
     その問いに答えるために、わたしは見ていた雑誌を捲る。そして、お目当てのページを開くと、彼女に見えるように掲げて見せた。ちらりとそのページに目を向けると、ますます機嫌を損ねたように唸り声を上げる。わたしは、そんな彼女の反応が新鮮で面白かった。
     わたしたちは、こうやって時々会って話をする。何がきっかけだったのかは良く覚えていないけれど、不思議と話の種は尽きることがなく、気がつくと何時間も経っていることもしばしばだった。
    「何かあったの?」
     彼女が頭を軽く傾ける。顎のあたりで切りそろえられた顔にかかる髪が揺れた。
    「素敵なお洋服、私にあわせてくれたんですの?」
     話をごまかすように彼女が言った。わたしはその言葉に服を見下ろす。彼女の青い鮮やかなワンピースと、わたしの黒い青のスカートを合わせたのかと問われたのだろう。わたしはどう返そうか迷ってしまった。意識をしてきたわけではなかった。
    「その表情を見る限り違うようね。その透けるような青いスカート可愛いですわ」
     ありがとうと言うように頷くと、彼女が少しだけ和らいだような表情を浮かべる。席に来る前に注文していたらしい、ストレートティーが届くと彼女は一口飲み込む。
    「さっき、ノエルの取材をしてきました」
     わたしは、雑誌の中に写るノエルと、目の前に座る鞠衣を交互に見つめる。
     ノエルは、これからブレイクすると推されているインディーズバンドのボーカルだった。最近は小さいながらも雑誌などでよく見かける。
    「どうだった?」
     そうですわねえと思い出すように、少しだけ思いを巡らす。それから口を開いた。
    「第一印象は、尖っている感じでしたわ。周りの大人を斜め上から見ている感じで。口調も荒っぽかったし、話を聞いてみても、印象は変わらなかったわ」
    「でも、何かあった?」
     彼女が他にも言いたいことがあるような気配を感じて、先を促す。
    「最後に、スタッフにも丁寧に挨拶をしてから帰りましたの。その時に少し印象が変わって見えたのですわ」
     すっきりしない彼女の様子を見て、また職業病がでたのねと呆れたようにわたしは毱依を見つめた。氷が溶けかけたカフェラテは上澄みが薄まってしまっていた。
     毱依は、インタビューの仕事をした後はこのような様子になる。彼女は、インタビュー相手が本当に伝えたかったことを聞き出すことができたのか不安になるらしい。
    「インタビューのお仕事、好き?」
     ふと、気になったことを尋ねてみる。彼女は本来、インタビュアーではなく編集者のはず。
    彼女は不意打ちの質問に、なにを聞かれたのか理解できないような顔をしていたけれど、すぐに質問の意味を飲み込んだようだった。
    「ええ、大好きよ。それまでは出会えなかったひととも会うことができて、知らない話も聞けて。わたしにはこの仕事が天職だったと思えますもの。今でも、初めて会うときには緊張しますし、どこまで踏み込めるかどこまで話を聞けるか、いつも手探りなのですわ」
     分かります? と問いかけるようにわたしを見る。わたしは分かっていると頷き返した。
    「聞いた話をどうまとめるかで話の趣旨が変わってしまいますから、いつも神経を使いますの。特にうちは雑誌の毛色が特殊だから聞いた話を丁寧にまとめないと問題になることもありますでしょう」
     彼女の雑誌は、耽美系雑誌と呼ばれるジャンルだった。少し前も、クレームが入ったと荒れていたことを思い出す。
     また、もの思いに沈んでしまった彼女の様子を見ながら、わたしは底に残った温いカフェラテを啜った。

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