台風接近のため、開催は中止となりました。詳しくはText-Revolutions準備会のページをご参照ください。
「またおとなしいですね、父上」
「仕方ないだろうっ。騒ごうとすると犬の鳴き声になりそうなんだからなっ」
息子の自宅に今日はお泊り。妻は勤務中。
「おまえ一人なのか」
「ええ。父上、ほんとに犬で良かったですね…」
「どういう意味だ」
「いえ…」
失敗した料理を渋々食べているとは言えず。
「それは、なんだ」
「食べてみますか、父上」
差し出されたブツ。一舐めして狆、もといエドワード王は飛び上がった。そして水を飲んで、ぺっぺっと吐き出した。
「何をするか、父を暗殺する気か、エドワード」
げろっげろっ。変な声だしてまだ何か吐いている犬。
「何なさっているんですか、お二人とも」
帰ってきたトマスがそう聞いた。
「…えらく吐いてしまいましたね、陛下」
「毒を食べせさせられたんだ、こいつに」
テーブルの上の皿から一摘みしたトマスはえも言われぬ顔をした。
「…またスパイスの量間違えたんですか、殿下」
「また、とは」
「よくこういうのを、ですね…殿下、妃殿下の真似なさったんですか」
「それは…したよーなしないよーな」
「なんだ、その真似とか言うのは」
「妃殿下の料理は…グッチャグチャなんです、こんな感じに」
抱き上げてトマスがテーブルの上を見せた。
「見るからに不味そうだな、いや実際不味いけど」
「作り直してきますね」
トマスが皿を手に台所に向かった。
「作り直せるのか」
「ええ、ターメリックとブイヨンスープでのばして、鶏肉加えてチキンカレーにします、ナンは作ってありますから温めるだけになってますよ、待ってくださいね、あ、陛下はドッグフード出します」
「頼む」
「はい、陛下」
一時間後、食事は無事済んだ。ドッグフードも。
「ところで、おまえ、ジョアンとは暮らしていないのか」
「彼女ならこの世界の男性と結婚してますよ、今は女優をしています」
「ほー…」
「アクションスターだそうです」
その会話の合間に犬が吐いたブツを始末し、トマスは食事の片付けも終わらせてから、お茶と菓子を手に戻ってきていた。
「フィリッパ様はいつ休みに」
「さてな。休みの間はここに行っててくれとだけ」
「この調子でたらい回しですかね」
「つくづく、父上」
「なんだ」
「犬で良かったですね」
「どういう意味だ」
「面倒なくてねー…」
狆はむっとしていたが、総裁様は無視。
「しかも小型犬でよかった」
「エンゲル係数ですか、殿下」
「それはあるな、アキタなら相当行くからな」
「……エンゲルとは」と犬。
「家計簿における食料費の割合です、うちの場合は…電化製品の修理費が一番ですけどね」
「その理由は」
「殿下です」
「あ…(察し…)」と犬。
「トマス…」
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