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【現代】【会誌・合同誌】花屋の薫君

  • 稲取-33 (現代)
  • はなやのかおるくん
  • 探沢歩々子・法田波佳
  • 書籍|A5
  • 202ページ
  • 800円
  • 2020/1/19(日)発行

  • とある商店街の片隅。
    薫君と呼ばれる店主が営む花屋には、年も性別も境遇も様々な人々が集う。
    感謝、後悔、恋心、懺悔。それぞれの想いを抱える彼らと、柔和でちょっぴりミステリアスな薫君の、花を巡る暖かな短編7作。
    探沢歩々子(@TNZWPPK )さんとの合同短編集です。

    ◎掲載作品一覧
    「小さな真心にカーネーション」
    「アネモネに秘匿する」
    「百八本のチューリップよりも」
    「釣鐘草は鳴り響く」
    「花屋の薫君」
    「今、カスミソウは手折られた」
    「薫君の花屋」


    【掲載作品一部冒頭】
    ◆小さな真心にカーネーション
     とんとんとん。
     ドアの向こうで、木の表面を叩く小さな音と、飴玉を含んだような幼い声がする。その二つだけで誰が来たかわかった幹也は、机に向かったまま返事をする。
    「おじゃましますー」
     声の主はドアを開け、そう言って中へと入ってくる。まるで大人みたいだな、と幹也は思った。


    ◆アネモネに秘匿する
     昨日アイロンをかけたばかりのスカーフは、抵抗もなくしゅるりと解けた。手のひらで泳ぐ朱色は薄く皺がつきつつあって、いい加減どこかで決めないと、と葉月は思う。けれど、何度しても納得がいかず、結局次に結んだものもすぐに解いてしまった。
    「……はづきー、父さん、入ってもいいか?」
     ぴちりと閉めた扉の向こうから、父の声が聞こえてくる。突然響いたそれに肩を飛びあがらせた後、葉月は「もうちょっとー」と鏡を向いたまま答えた。


    ◆百八本のチューリップよりも
     やってしまった。
     最初に浮かんだのはそれだった。次いで現れたのは、スケジュール管理すら満足できない自分への情けなさ。その次は多忙な仕事への苛立ち。そして最後は、切羽詰まった現状への焦燥だ。
     自分の手が震えていることにも気づかず、手元のスマートフォンを凝視する。見慣れたメッセージアプリの画面には、愛しい人の名前で〈ついに明日だな。楽しみにしてる〉とメッセージが映されていた。


    ◆釣鐘草は鳴り響く
     深緑の日よけの下に並ぶスチールバケツの中では、彩り鮮やかな花々が笑んでいた。息遣いが聞こえてきそうなほどに活き活きと咲き誇った花は、普段なら心弾み、目映りしながら選んでしまうところだろう。けれど今の早苗は、むしろ気持ちを沈ませたまま対峙していた。







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