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【百合】Drunk Lovers

  • 熱海-16 (恋愛)
  • どらんくらばーず
  • 桜良ぱぴこ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 24ページ
  • 0円
  • 2019/5/26(日)発行
  • わたしがどんなものを書いているのかというのを知って欲しくて作った無配本です。
    イベントで配りまくったのでお手元にある方もいらっしゃるかもしれませんが、もしほかの本を手に取っていただけるのならついでにもらってやってください。
    ゆるやかなほわほわとした百合小説です。

    *本文より*
    「うええ……ひなちゃん助けてえ」
    「カナさん、飲み過ぎです」
     行きつけの居酒屋近くの公園。わたしは女の子に連れられるかたちで、ようやく千鳥足を落ち着けることができていた。ベンチに腰掛ける彼女の膝に頭を乗せ、ぐるぐるする視界を遮りたくて目を閉じる。三寒四温で毎日安定しない気温が続く春先、今夜は特に寒かった。
    「ひなちゃん、あったかいねえ」
    「そんなこと言ってる場合ですか」
    「うー」
     ついさっきまでは久々の酔いに気をよくしていたはずだった。頬が紅潮しているのが自分でもわかるほど、ふわふわとした心地で楽しくふたりで飲んでいた。ところが会計に向かおうと席を立った瞬間、急にぐらついて足取りがおぼつかなくなってしまった。必死に吐き気をこらえながら、なんとかたどりついたのがこの公園だった。
     ちょっとはしゃぎすぎたな、とぼんやりする頭で反省してみるものの、飲み口のよい日本酒をがんがんあおり、気が付けばハイペースで五合も飲んでいたのだから始末に負えない。いつもならまだ全然平気なのに、とひとりむくれてみる。
     ひなちゃんは優しくわたしの頭をなで続けてくれていた。あやされるがままに身を預けていると、なんだか急に甘えたくなって、ついつい猫なで声になる。
    「ひなちゃーん、彼女さんに怒られちゃうねえー」
    「ああ。とっくに別れたので大丈夫です」
    「えええ! だって、最近付き合い始めたって言ってたのに!」
     ちょっとからかっただけのつもりでいたのに、衝撃の事実をあまりにもさらっと言ってのけるものだから、おもわず素っ頓狂な声が出た。対してひなちゃんは表情ひとつ変えず、もう終わったことです、とまるで記憶ごと突き放すように言った。
     わたしはなんだか悲しくなってしまって、ひなちゃん、と名前を呼んだ。ひなちゃん、がんばったんだね、って。
    「私のことより、まずカナさんは自分のことを心配してください」
    「……おっしゃるとおりです」
     まだ上体を起こせないほどべろべろになっていたわたしは、いっそのこと吐いてしまえば楽になれるかもと公園の端にある水飲み場に目をやった。けれどなぜだか、いまひなちゃんから離れてはいけない気がした。放っておけない、というのとは少し違うなにかがあった。
    「ねえひなちゃん、わたしね、ひなちゃんのことだいすきだよ」
    「なんですか、急に」
     酔っ払いの戯言だと軽くあしらわれて、それでもまだ頭をなでていてくれるひなちゃんの手は、とてもやわらかくて、そして優しかった。

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