「ハードボイルド主夫 竹田竜作」のコメディーテイストから一転してシリアスなテイストの物語となっています。
本作品単体でもお楽しみいただけますが、両作品お読みいただけるとより一層お楽しみいただけると思います。
★★★お知らせ★★★
作品名のサブタイトルを変更しました。
在庫分につきましては、変更後のサブタイトルを記載したカバーを巻いて頒布させていただきます。
紙本での記載は変更前のものとなっておりますことをあらかじめご承知おきいただきたく願います。
【あらすじ】
二〇〇七年六月下旬、夕食のひと時を楽しむ夫妻のもとを訪れた一人の男。
男は夫妻とメイドを殺し屋敷に火を放って逃走した。
男の名は「キラーゼロ」。
キラーゼロは平然と「依頼されたから殺した」と言い残した。
海外旅行先で両親の訃報を聞いた麗香は急遽帰国するも、両親の死に顔も見ることもできない悲しい別れをすることとなった。
警察の捜査本部では、キラーゼロに殺しを依頼した容疑者の一人に麗香の名前が挙がっていた。
そんな中で麗香はキラーゼロとキラーゼロに殺しを依頼した首謀者と対面する。
麗香の心には二人への復讐の灯火が小さく灯った。
復讐の果てに少女の瞳には何が映るのか?
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★★★以下に試し読みを掲載しています★★★
報酬
二〇〇七年六月十五日午後十時過ぎ。アメリカ合衆国イリノイ州シカゴのイースト57thストリートの路地裏に三人の男たちが集まっていた。
三人の中には警察官の姿が見られた。男たちのいる場所は人目に触れないため職務質問を行うには不向きな場所と言えた。
シカゴ市警察のデニス・ホップマン巡査は、マフィアの組織の一部を任されているキャプテンのマルケス・ロドリゲスから執拗に問い詰められていた。他の一人はそのやり取りを少し離れて眺めていた。
「デニス、見失ったじゃ済まねえんだよ! 俺たちじゃ目立つからお前に頼んだのに。ケインさんにどう弁解すれば良いんだ? どう落とし前をつけるんだよ?」
「そう遠くへは行ってないはずだ。明日の朝イチから付近一帯を調べる」
「他の州に移動していたらどうする? どうすんだよ?」
「そ、それは……」
「マルケス、落ち着けよ。デニスは良くやってくれたよ」
「でも……」
「ボスから後払いの分の報酬を渡すように言われている。デニスの仕事はここまでだ」
「キラーゼロ、良いのか? こいつしくじってるんだぞ?」
「キラーゼロ?」
マルケスの言葉を聞いてキラーゼロと呼ばれた男は苦い顔をした。
男はそっとデニスのもとに歩み寄り、デニスの左肩をそっと手で叩いて微笑んだ。
「これまでご苦労。今回の件のことは忘れてゆっくり休むといい。少ないけど受け取ってくれ」
男はゆっくりと腰に右手を回した。
「さぁ、右手を出して」
男に促されてデニスは右手を差し出した。
男は百ドル札数十枚を輪ゴムで束ねた札束をデニスに握らせた。
「え? こんなに?」
「その他に口止め料を渡すように言われている」
男は再び腰に右手を回した。
「今回はどうもありがとう」
男がデニスを左腕で抱きしめた直後、二回小さな金属音が鳴った。
男はデニスの左胸と腹を減音器付きの拳銃で撃った。デニスは男にもたれかかりながらズルズルとその場にうつ伏せに倒れ込んだ。
「お、お前、何やってんだよ!」
「何って口止め料を渡したんだよ。お前にも口止め料を渡すように言われている。お前、ボスと俺の名前を簡単に口にするな」
「やめろ! やめてくれぇ!」
マルケスはそう言うやいなや踵(きびす)を返してその場から逃げ出した。
「おいおい、マルケス、弾より早く走れねえだろ」
男はデニスが携行していた銃を手に取りマルケスに向かって発砲した。
男が撃った弾はマルケスの背中の左側に着弾し確実に心臓を撃ち抜いた。マルケスは路面にうつ伏せに倒れ込んだ。
「デニスは射撃の腕がいいなぁ」
男は戯言(ざれごと)を口にした後、絶命したマルケスのもとに行き、先ほどデニスを撃った銃をマルケスの右手に握らせてその場を立ち去った。
「ボス、口止め料渡してきました」
「ご苦労。デニスに渡すはずだった報酬は君が受け取ってくれ」
「毎度あり」
「プランAをこのまま続けるのは難しそうだな。プランBに変更しよう。時間を無駄にしてしまった。最初から君に任せておけば良かったよ。早速取り掛かってくれ」
「承知しました」
翌日、男はシカゴ・オヘア国際空港から日本に向けて出発した。
続きは紙本もしくは電子書籍で。
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