「笑撃」の中編小説
初めて書き上げた小説はコメディー小説でした
【あらすじ】
結婚して五年、会社をリストラされ無職になった竹田竜作(たけだりゅうさく)は、妻の恭子(きょうこ)から専業主夫になることを提案される。
竜作は専業主夫になることを引き受けるが、専業主夫になることは会社からリストラされた日から決まっていたことだった。
恭子から依頼される家事雑事をなんとかこなしていきながら一ヶ月が過ぎた頃、竜作は元同僚の剣崎虎之介(けんざきとらのすけ)と再会する。
虎之介は、竜作に竜作と恭子のことを何者かが監視していることを忠告する。
何者かによる監視下におかれている中、竜作は以前勤めていた会社の社長と面会し、リストラの真相と、竜作と恭子を監視している者たちの正体を聞き出す。
恭子には恭子自身も知らない秘密が隠されていた。
幸せな夫婦生活の中に漂い始めた不穏な気配。
竜作は夫婦に忍びよる危機を脱することができるのか!?
中編小説ではありますが、プロローグからエピローグまでを32話に分割していて一話一話徐々に読み進めることができます。
本編作品の他、ショートショートなど9編を収録しています。
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プロローグ
「竜作、あなたずっと家にいるのなら専業主夫やってよ!」
結婚して五年、我が家のボス(俺は陰で妻のことを『ボス』と呼んでいる)からの突然の提案だった。
昨年末に雇用されていた会社からリストラされ現在無職の俺に対する提案。
これまでの間、転職活動をしていなかったわけじゃない。
これまでの戦績は十九連敗、全て書類選考の段階で落とされた。
今日あいにくにも二十連敗目の不採用通知が届き、業を煮やしたボスがとうとう最後の切り札を出したわけだ。
これまで夫婦共働きだったが正直言ってボスの方が稼ぎが良い。
無職の手前、俺に異論を挟む余地は無かった。
実は俺が専業主夫になることは、昨年末に雇用されていた会社からリストラされる時点で決まっていた。
俺が勤めていた会社はボスの伯父が社長を務めている玩具会社だった。
ボスの伯父の平沼武雄(ひらぬまたけお)はボスのことを溺愛していた。
平沼武雄社長は末期の肺癌を患い病床に伏せていた。
そんな折に社長の長男で副社長の雄一(ゆういち)氏と、次男で専務取締役の雄二(ゆうじ)氏と俺の三人が病室に呼ばれた。
社長はか細い声で俺達に遺言を残した。
「雄一、私の亡き後の社長はお前に任せる。好きなようにやれ!」
「はい、お父さん!」
「雄二、お前には副社長とお客様相談室長を兼任してもらう。この意味はわかるな?」
「はい、お父さん、必ずお客様へご安心を提供します」
「最後に竜作君、恭子(きょうこ)はあんたにべた惚れだ。恭子のことをよろしく頼む」
「はい、必ず恭子さんとの幸せな生活をお約束します」
「それを聞いて安心したよ。しかし君には申し訳ないが君は今日付けでクビだ」
「えっ、社、社長、それは一体どうしてですか?」
「君には恭子のことを二十四時間体制で守ってもらいたい。恭子に幸せな生活を送らせることが、私の弟、恭子の父親と約束した最優先事項なんだよ。今はわからないかもしれないが、おいおいわかってくるはずだ。恭子を守れるのは君しかいない。いっそ専業主夫になるといい。どうかよろしく頼む」
「は、はい……」
ボスの知らない間でそんな約束事が取り交わされていたのだ。
それから数日後、社長は静かに息を引き取った。
社長が俺に残した遺言の真意はわからない。
しかし、社長と取り交わした約束通りに俺は専業主夫になることになった。
俺は表面上ボスの提案を受け入れる形で専業主夫になり、俺の生活は次の日から一変した。
続きは紙本もしくは電子書籍で。