21XX年、地球に小惑星が衝突する可能性が指摘された。大きさは15キロメートル超。衝突地点の地震の規模はマグニュード11、海に落ちれば300メートルの津波が起きる。
軌道計算により、90パーセント以上の確率で、小惑星は地球に衝突する。
この人類滅亡の危機に、国連と国際宇宙事業団は小惑星の軌道を変える計画と共に、それが失敗したときの為の、地球人の他惑星移住計画を推し進めた。
既にドーム型基地が建設され、移民が可能になっていた火星の移民枠は、優秀な研究者や技術者、宇宙開発に多額の資金を援助してきた有志で、直ぐに埋まった。
その他の地球から脱出したいという人達の為に、事業団が提供したのは、資金面と人道的観念から凍結されていた、系外惑星への移民計画だった。
まずはテラフォーミングプログラムを搭載したロボット作業機達が目的の移民星へと飛び立つ。彼等は移民船が辿り着く前に、移民星が居住可能な状態にする。
そして、宇宙船が完成し、搭乗員の選定が終わり、宇宙エレベータから飛び立った。
目的惑星は14光年先。搭乗者は二万人。5代に渡る、船という一つの小さな世界での旅が始まった……。
目的の惑星、カナン到着まで後14年。
船の中が、カナン降下を巡る、管理者グループ内の覇権争いに、一般人移民者との亀裂とキナ臭い様相を表してきた頃、大気循環管理班のエミリオの元に小天体衝突による船体尾部破損の一報が入る。(エミリオPrologue・芸は船を助く/歌峰由子)
清掃センターに勤める一般移民者の寡婦、槇田典子は二人の娘を育てる為に管理者グループの施設を清掃する『特別清掃』を請け負っていた。そんな母の危ない仕事をうすうす感じていた娘の恵は一般移民者の若者が企てる『星雲革命』の実行者にそそのかされ……。(典子Prologue・秘すれば疑なり/いぐあな)
「……降りなくて良いです」
食糧生産管理室の研究者、ジェイドは班のカナン降下候補選定を断った。自分にそんな能力は無い。船に残って研究を続けたい。が、父である元室長は……。
降下を巡る班内の軋轢、親子の確執、そんな中、彼の友人である、はつかねずみロボ、アルジャーノンが行方不明になり……。(ジェイドPrologue・痩せ馬に鞭とネズミ/轂冴凪)
(掲載順/敬称略)
三者三様の事情がひょんなことから出会い、共に革命から少女を救うことに……。
移民船という小さな世界の中で起きた、小さな、三人にとっては大切な転機となる事件。
歴史に名前の残らない、アンサングな人々を描いたSF書き三人によるリレー物語です。
試し読み→
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13767566