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【ローファンタジー】ARTEMIS

  • あるてみす
  • 藤和
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 292ページ
  • 2,000円
  • 2020/08/04(火)発行
  • エブリスタのコンテストやキャンペーンに投稿したお話の短編集。
    切ない物語やほのぼのファンタジー、何気ない日常などの詰め合わせです。

    『幼き神は花畑に遊ぶ』
    『Miss.Gestalt』
    『夢見る乙女の夜』
    『カロカガティア』
    『まぶたにキスして』
    『共に歌う祈りの庭』
    『喪失のアリオーソ』
    『異邦人』
    『こどもドラゴン』
    『鉱物の王』
    『朝に恋して』
    『Ms.ShoesHolic』
    『お肌の緊急事態発生!』
    『軌道線上のグレイスノート』
    の14本を収録。

    文庫版 292ページ

    傾向:ファンタジー、日常、耽美系、シリアス、SF(すこしふしぎ)、短編集、敬語男子、幻獣

    --本文サンプル--
     

    「捕まえろ! ミス・ゲシュタルトだ!」
     大きな商人の家の周りを何人もの警邏隊が取り囲み、更にその周りに街の人々が集まっている。
     彼らの視線は、商人の家の屋根の上に向けられている。そこにいるのは、 大きな袋を持った一人の少女だ。彼女は顔の上半分を猫の仮面で覆い隠し、 ペチコートの代わりに膝丈のキュロットと鳥籠のようなクリノリンを穿いた上に膝丈のローブ・ア・ ラ・フランセーズを纏っている。
     彼女が袋の中から紙の束を取り出し、屋根の上からそれを撒いた。
    「警邏隊の皆さんごきげんよう。
    これは私、ミス・ゲシュタルトからのプレゼントですから受け取ってくださいまし!」
     ひらひらと地面に落ちた紙を見て、家の主である商人は顔を青くする。次第に、 警邏隊の視線もその商人の方へと集まっていった。
     商人がミス・ゲシュタルトを指さして叫く。
    「こんな事よりも、今はあいつをなんとかしろ!
    盗みに入られた私が被害者なんだ!」
     撒かれた紙は、この商人が今までに詐欺を繰り返して財を蓄えてきた記録が綴られている物だった。
    「あっはっはっはっは!
    それではみなさん、ごきげんよう」
     笑い声を上げて、ミス・ゲシュタルトは家々の屋根の上を跳ねて姿を消す。後に残ったのは警邏隊に囲まれた商人と、 街の人々の歓声だった。

     

     人の目が届かない貧民街へと逃げ込んだミス・ゲシュタルトは立ち並ぶ建物の影で仮面を外す。すると、 身に纏っていたドレスは霞となって消え、仮面も猫を模ったブレスレットへと変わった。
     代わりに現れたのは、質素な服を着た、 杏色の髪のひとりの少年だ。少年はミス・ゲシュタルトが持っていた大きな袋を担いで、 貧民街の中を歩いて行く。そして辿り着いたのは、一件の孤児院だった。
     細い脇道に入り、孤児院の裏口へと回る。
    「ただいまー」
     そう言って少年が裏口から入ると、そこには待ち構えていたように栗色の髪の青年が椅子に腰掛けていた。
    「おかえりゴーチェ。首尾はどうだい?」
     青年がそう訊ねると、ゴーチェと呼ばれた杏色の髪の少年がにっこりと笑って袋の中から大きな額縁や、 宝石や金貨を取り出す。
    「今回も上々だよ。
    アリスティドの方も、みんな良い子にしてた?」
     アリスティドと呼ばれた青年は、ゴーチェから荷物を受け取り、金貨を数えながら答える。
    「ああ、みんな良い子にしていたよ。
    ただ、前々から奉公に出ることが決まっていた子がいただろう?
    その子が、ゴーチェのいない間に引き取られていったよ」
    「……そっか、ちょっと間が悪かったなぁ」
    「最後に君と話したかったって言っていたけれども。
    まぁ、この街にいる限りは二度と会えないわけではないしね」
    ふたりで話をしながら、アリスティドは金貨の勘定が終わったようだった。
    「よし、今月の生活費と炊き出し代は十分まかなえそうだ」
    「アリスティドが計算得意だから助かるよ」
    「ゴーチェももう少し、数字に強くなった方が良いよ」
     くすくすと笑うアリスティドにゴーチェは不満そうな視線を向けたけれども、 ふとお腹を押さえて思い出したように言う。
    「そろそろ晩ごはんの買い出し行かなきゃ」
     壁際にあった棚から孤児院の食費をまとめた財布を取り出して、 ゴーチェは入ってきた裏口の向かいにあるドアを開ける。
     アリスティドが立ち上がってゴーチェに続く。
    「俺も付いていこうか」
    「うん。助かる」
     ドアの向こうには大きなテーブルが置かれた部屋があり、 そこで何人もの子供達がおしゃべりをしたり、遊んだりしている。
     子供達に見送られて、ふたりは市場へと向かった。





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