「きっと君も私も小心者だね」
雪に閉ざされた山小屋の中で君は言う。
この小屋にふたりが捨てられてどれくらい経ったのだろう。助けが来ることは勿論ないし、自分達で逃げ出すことも出来ない。
君が言う小心者の意味は?
逃げ出す勇気が無いと言うこと?
それとも死ぬ勇気が無いと言うこと?
ふたりで身を寄せ合ってただただ凍える。
君がぽつりと言った。
「死にたくない」
「いきたい」
今月の給料明細を見てそう呟いた。
週休二日は名ばかりで、残業代などと言う物は勿論無い。
サービス残業なんてくそ食らえだ。こんなに働かされたら時給が最低賃金を下回る。
お金が無い、米がない、食べる物がない。
このまま私は会社に殺されるのか。
そんなのは絶対に嫌だ。
「絶対に負けないかんな……!」