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【現代】【恋愛】金曜日は雨がいい

  • きんようびはあめがいい
  • 梓野 みかん
  • 書籍|A5
  • 76ページ
  • 400円
  • 2020/05/24(日)発行


  • 来月から中学生――卒業式を間近に控えた主人公・明智奈(あけちな)は、晴れ女。でも卒業式には雨をどうしても降らせたい……。青い春の一週間をあなたに!
    以下、章ごとの冒頭です。
    ----------------------------------------------------
    (月)
     晴れるに、こしたことはない。
     明智奈はそう思う。
     運動会、修学旅行、クラブ活動に町の清掃ボランティア。屋内行事の文化祭とて、天候しだいで出足は鈍る。鈍ればバザーの売り上げが落ちる。落ちれば生徒会運営に支障が出る。少なくとも、思うがままには立ち行かない。
     明智奈は今、今年度の収支計算書を眺めて、ニンマリしていた。
     マラソン大会、授業参観に避難訓練。雨が降って都合がいいことなど何もない。そもそも万事、晴天を大前提に進むのだ。雨天など最悪である。日時の変更やら代替案の捻出やら保護者への対応やら、何から何までイレギュラーにカネと人員を奪ってしまい、結果、生徒会予算に累を及ぼしかねない災厄となる。
     計算書の数字は、生徒会長であった明智奈の、いわば通知表である。
     ――ぬかりなし。
     卒業式を金曜日に控え、卒業生に配布する記念品の費用を大幅に増やしてもなお、余裕をもって次期会長に引き継ぐことのできる数字である。
     明智奈は計算書から目を上げた。
     慣れ親しんだ生徒会室。
     来月からは中学生。
    「でも、いいんですか。そんなことして」
     湯のみを置いてそう言うのは、次期会長のコバルトである。
    「いいもなにも……あ!新しいティーバッグ、これ開けちゃったの?昨日の私の出がらしは?その辺に吊るしておいたのに。もったいない」
    「出がらしがぶら下がった生徒会室なんて、もういやなんですよ僕は」
     コバルトが手にする青磁のティーカップから、ダージリンの香りが漂う。その濃厚な色を見て顔をしかめた明智奈は、自分の湯のみに口をつけた。
     もったいない。
    「次の会長が今からこんな贅沢していいの?知らないよ、予算が足りなくなって学校と生徒から総スカン食らっても。内申点にも響くし」
    「いいんです。僕は中学受験しませんし、先輩のように在宅特待生も狙ってませんから。歴代にわたる凡百の生徒会長と同じく、職務を全うできれば十分です。それに僕は明智奈会長のような〈奇跡〉は、とてもとても、起こせませんし」
     奇跡。
     「腹筋」と書かれた湯のみを置いて、明智奈はコバルトを軽くにらんだ。
    「ヤなかんじ。あるものはフル活用するのが私の主義なの」
    「よくわかってますよ。先輩の下について目の当たりにさせられたらね」
     ティーバッグのことだけでなく。
     コバルトは窓の外に見える青空をちらっと見た。
    「……先輩が驚異の〈晴れ女〉だってこと」

    (火)
     ポエム先生は再会した。
     かつての想い人に。
     赴任先の、この学校で。
    「あ」
     職人然とした、無口な用務教員のハイク先生こそがその人だった。

    (水)
    「二人とも、結婚はしてないんでしょうか」
     コバルトはテルテル坊主を作りながら、向かいに座った明智奈に問いかけた。明智奈はといえば、頼れる後輩の作ったテルテル坊主の頭に、黒い油性ペンで泣き顔を書き入れている。絵心に乏しいからなのか、道具や材料のせいなのか、やたらとにじんでしまった顔は、おどろおどろしいこと、この上ない。

    (木)
    「話はつけた」
     明日に控えた卒業式の全体演習のあと、生徒会役員が会場の準備を手伝っているときに、コバルトは明智奈にひと言、そう告げられた。そして下校したのち、大荷物で彼の家に現れた明智奈は、再び言った。
    「話はつけた」

    (金)
     願いは、届かなかった。
     とは、明智奈は思っていなかった。
    「やっぱり、おまえは晴れ女だなあ」
     明智奈の父がネクタイを締め、アパートの窓から空を見上げた。

    (土)
    「ファフロツキーズ現象、起こる」
     朝刊の第一面、四分の一ほどに、昨日の校庭の様子が写真つきで載っていた。校長先生と担任の先生のインタビューが記事の半分を占めている。

    (日)
     朝からの雨は久しぶりだった。
     ザア、とアパートを包む音が、昨日とはまた別の静かさを与えている。明智奈は自室の窓から外を見下ろし、地面のくぼみにできた水たまりに、現れては消える波紋をしばらく眺めていた。午前中のうちにスーツをクリーニングに持っていこうか、悩んでいるうちに昼になり、明日でいいか、と思い至ったときには昼を過ぎていた。
     コバルトの返信によれば、待ち合わせは二時。
     居間でテレビを見ながら笑っている父に声をかけた。
    「お父さん、私ちょっと出るから」
    ---------------------------------------
    こたつ読書の春支度に。
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