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フローラ・ダニカは夢をみた

  • ふろーら・だにかはゆめをみた
  • 梓野 みかん
  • 書籍|A5
  • 64ページ
  • 400円
  • 2019/03/21(木)発行


  • 18世紀末のデンマークで作られた、二つの『フローラ・ダニカ』の始まりを、歴史考証はほとんど無く、軽~く描いた短編です。
    しかし……時代考証とか歴史とか……私には手に余る!ことが!わかりました!(泣)
    なのでそのへん、すっ飛ばして書きたいように書いてます。何でも許せる方向け。
    私は書いてて楽しかったです(号泣)。
    以下、各章の冒頭です。
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    (Ⅰ.植物図譜)
    「王様、図鑑ですよ!」
     と、ほんとうに言ったのかどうかは知らない。
     私はまだ生まれていなかったから。
     だから、これは夢なのだ。
     自分がどうやって生まれて来たのかということについて、わからない記憶の空白を埋めるための、夢。
     それは今の私が知りえていることから思い浮かんだあれこれを、しごく自由に貼り合わせてできているものだから、万人にとっての真実ではない。
     しかし、そんな真実にどれほどの価値があるだろうか。
     私は私のために夢を欲している。
     それだけが、私にとっての真実なのだ。

    「王様、図鑑ですよ!」 
     図鑑を作りましょう、と熱弁をふるうのは、ドイツからやってきた一人の男である。
     男の名前はゲオルグ・クリスチャン・エーデル。
    「エーデル、しかしねえ」
     作ってどうするんだい、と言うのは、エーデルに王様と呼ばれた男である、デンマーク国王のフレドリク5世だ。
    「この温室を作るのだって、大変だったんだよ?」
     二人がひざをかかえて座っているのは、デンマークの首都はコペンハーゲンに牙城をかまえる、由緒正しき伝統を誇るコペンハーゲン大学の、その敷地の片隅にひっそりと作られた、小さな温室である。ほったて小屋、と言ってもいい。その辺の山から集めてきた草花を植えて植物園のテイにしたやぶれ温室で、その中央に植えたカシの木の下に、二人は並んでいた。

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    (Ⅱ.磁器)
    「やあ、バイエル」
     と、ほんとうに言ったのかどうかは、知らない。
     私はまだ、生まれていなかったから。
     だから、これは夢である。
     どのように私が、私として、この世に存在し得たのかを語る夢。
     夢というのは、記憶の組み合わせであるという。であれば、私の記憶が私のものでしかない以上、私の夢が、万人のそれとまったく同じになることはない。
     あまつさえ、たった一人の他人とでも、同じ夢を漂わねばならぬ道理はない。
     そうでなければならぬと言う者を、私は信用しない。
     その者は真実というまぼろしを見ている。
     私が見るべきは、私だけの夢なのだ。

    「やあ、バイエル」
     そう呼ばれた男は、ふりむきもせずに顔をゲンナリとさせた。
     男の名前はヨハン・クリストフ・バイエル。ドイツからやってきた画家である。
     いまこの瞬間も、バイエルは画家らしく手に絵筆を持ち、紙を広げた机に背中をまるめて覆いかぶさっていた。
    「また来たんですか」
     王様、とバイエルが暗い声で言う。対照的に、明るい声が後ろから飛んできた。
    「ウン、また来ちゃった」
     窓の木枠に足をかけてよじのぼっているのは、国王クリスチャン七世である。このデンマークで一番偉いであろう人物は、従者に尻を下から持ち上げてもらいながら、バイエルの部屋への侵入を成功させた。高貴な足が床についた瞬間、今度は部屋の扉がすみやかに開かれて、別の従者が赤いじゅうたんと小ぶりの椅子を音もなく配置し、すぐに消えた。侵入してから三歩と歩くこと無く、王は椅子に収まった。
    「お忍び、成功!」
    「いつも言ってますけど」バイエルは絵筆を置き、嫌々ふりむいた。「ふつうに中から入って下さいよ。王様なんだから」
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    こたつ読書の箸休めに。
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