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【ハイファンタジー】インフィニティ第四章

  • 箱根-21 (ハイファンタジー)
  • いんふぃにてぃだいよんしょう
  • 凪野基
  • 書籍|A5
  • 182ページ
  • 800円
  • https://kakuyomu.jp/works/117…
  • 2019/3/21(木)発行

  • 「このとんでもない偶然を、果てしない幸福を想う。」

    女神が創った世界を精霊が彩り、魔物が破壊する。多種族混在世界を舞台に、男装の半精霊ともと騎士、主人公ふたりのすったもんだの旅路を描く長編第四章、完結編。

    不安を拭いきれぬまま神都に到着した一行。シャイネは体調を崩し、ゼロはいとし子として起つ。神都の王子アズライトは真摯さを奇矯の仮面で覆い、復讐者レイノルドは薄らぐ憎悪に焦っていた。 動かぬ魔物たち、女神教の大祭。世界の境界を跨ぐ戦いは冬の入日に決着を迎える。 広がるは可能性の海、選び取るは一本の道。 己の足で進め。己の手で切り開け。


    ※やらかしました※
    奥付に記載している、設定集へのQRコードが古いままです。
    訂正のメモを入れます……ひーかっこ悪い_(:3」∠)_


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    【冒頭試し読み】
       

     先約があると武装して旅立ったナルナティアの帰還を待って、西へ発つことになった。
     出発を待つ間に、魔物の動向がどう変わるか予想もつかない。急ぐ旅ではないが、のんびり構えてもいられない。早くカヴェに向かうべきだろう。
     確かにナルナティアたちは経験豊富で頼れるし、気心が知れている。けれども、彼女らと同じくらい、あるいはそれ以上に腕の立つ傭兵は探せば他にもいるはずで、ことさらに待つ理由があるとは思えなかった。
     早く行こうと催促しなかったのはひとえに、漠然とした不安を拭い去ることができなかったからだ。
     魚の小骨が喉にひっかかったような、目に睫が入ったような違和感を不安と呼んでよいのかすら、シャイネにはわからなかった。わからないなりに、進むも退くも危険な気がする。
     先の見えない不安は、これまでに何度も経験してきた。父の仇をと息巻いて故郷を飛び出したことからして、衝動的だった。予期せぬ事態に直面するたび、時々の状況に応じて何とかこなし、乗り越えて、今ここにいる。
     長く旅を続けても、予感めいた不安には慣れない。おまけに、今回の胸騒ぎの一因は同行者たるゼロにある。
     記憶を取り戻してからというもの、彼は足繁く図書館に通い、開館時間のほとんどを読書に費やしていた。そして日に日に眉間の皺を深めてはつまらなさげに遠くを眺め、そうでなければ寝転んで天井を睨んでいた。
     シャイネは図書館通いを早々に諦めていた。精霊や魔物については既に知っていることか、明らかな間違いか、筆者の想像の域を出ないことしか書かれていなかったからだ。残念ではあったが、なかば予想できていたことでもあった。
     手伝うことがあれば、と声をかけてみたものの、やんわりと断られてしまった。食い下がるのも気が引けるし、同じ部屋にいるのも息苦しく、日雇いの仕事を受けてあちこち飛び回っている。
     魔物が増えたせいで、街の外での仕事は報酬が急騰している。薬草採集や、山野の自然物を研究している学者の護衛は良い稼ぎになった。
     合間には旅人、狩人、傭兵たちの噂話が耳に入ってくる。魔物は数こそ多いが、距離さえ保てば襲って来ないとかで、往来は少しずつ元に戻っているらしい。そのためか、包囲の只中にある神都も落ち着いているとのことだった。

    「まあ、いとし子への信頼があるからだろうけど」

     神都帰りの傭兵は、麦酒片手にそう語った。

    「いとし子って、そんなにすごいことができるの? 魔物の大群をぱっと消してしまえるとか?」
    「さあな。でも、女神教の首座だぜ。能無しが神都の長になれるもんかよ。それに、いざって時に何かできてこその神都二家だろうが」
    「ふうん……」

     顔が赤らんできた傭兵から逃れ、シャイネは首を傾げる。
     いとし子がただびとにはない力を持っているのは広く知られているようだった。けれども、それは「持っているはず」と期待込みでの話で、いつ、どこで、どうした、という事実に基づく情報は得られなかった。
     いとし子が実際に女神の力を行使するところは誰も見たことがない。それなのに、魔物の恐ろしさや実戦を知る傭兵でさえも、彼らが窮地を救ってくれると信じている。楽観的に過ぎるが、その信頼は何に由来するのだろう。
     逆に考えれば、実際的な人物にさえ奇跡的な力があると信じさせる雰囲気や噂話、憶測と期待こそが、アンバーを支える力なのかもしれない。虚像と侮るには、あまりに強大な力だ。
     ゼロの渋い顔を見るのは気持ちのいいものではない。おろしたての服にトマトの煮汁を飛ばした以上に塞ぐ。彼の機嫌を持ち上げることは煮汁のしみ抜きよりもはるかに難しいのが厄介だが、だんまりを通すのも大人げない。

    「アンバーって、そんなにすごいの?」

     ため息をこらえながら尋ねると、ゼロはさらにとんでもないことを言った。

    「おれ、実はアンバーのことをそう知ってるわけじゃないんだよ」
    「え、そうなの?」
    「十くらいのときにク・メルドルに引っ越したんだけど、その前も長いこと寝ついてたし、親戚のお兄さんっていう印象しかないな。すごく頭が良くて、物知りで……。がみがみうるさい大人と違って、話を聞いてくれたりさ」

     へえ、とこぼれた声は、不満を含んで重い。

    「姉よりずいぶん年長だけど、怖い人だとは思わなかったな。当時は女神の子とか、二家が云々って話はよくわからなくて、親からあの人は特別だって聞かされただけだった。もしかすると、若い頃から女神の力を使えたのかも」
    「力って、どんな?」
    「さあ……見せてくれたことはなかったんじゃないかな」

     神都で暮らしていた時分のことはあまり覚えていないと彼は言う。子どもだったのだから、詳細な記憶を求めるほうが酷だろう。

    「神都神殿そのものからして城みたいでさ、でかいんだ。端から端まで把握してる奴なんていないと思う。街に面した表側の部分には青服の訓練場とか神殿があって、奥は部外者の立ち入れない、神都の中心っていうか、議事堂だとか図書室だとか保管庫だとかがあった気がする。そういや、神都神殿の地下には女神がいるんだってさ。おれは見たことないけど」
    「女神って、本当にいるんだ」


    (続きは同人誌版でどうぞ)

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