「兄上っ」
画面上の男の姿。それを彼は見ていた。
「間違いないのか」
「・・・確かに」
式典の最中、その人は宇宙軍総裁のそばで一言二言、何か囁いているように見えた。総裁の表情が輝くように見えた。
「殿下・・・」
総裁の美しい顔がカメラの方を向いた。微笑む。さらりとこぼれた髪、それに碧い瞳。
「出るぞ、なんとしても、この二人には死んでもらう」
「え」
「この二人を片付ければ、なんとでもなる」
「片付ける・・・」
「宇宙軍はそもそもテロ対策の軍隊だ、その総裁を暗殺出来れば、活動範囲を広げられるというものだ」
「そういうことか」
納得していいのか。出来れば、と思うが、彼は願わない。幼いながらも必死で一族を支えてきた兄の姿をずっと見つめてきていた。何時の間にか兄は騎士としても力をつけていた。そして・・・ブラックプリンス直下の騎士にして作戦参謀。
「トマスという副官も侮りがたい。お頭が人質に総裁を監禁しても構わず攻撃を仕掛けてきた。そして、奪還していった・・・なぜお頭は総裁を助けたんだ、殺してしまえば良かったのに」
「何故、か」
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