――この左目に見えるものを知らずにいることが、いかなる幸福かはわかるまい。
隠遁した画家シャンクフラウンへ、私は北の王の依頼を告げにいった。しかし彼は、もう絵は描けぬという。そして「描けぬ」ということを証明してみせるといって、彼は一枚の絵を描き始める。
――あんたはとても耳がいい。もっとよく耳を澄ませてごらん。うたが聞こえるよ……
かつて天上にあったという伝説の都市アル・ハル。その遺失物として残存する、ふたつとして同じもののない星珠……そのうつくしさに魅せられて、トウジィは友人から星珠を盗み、伝説の都市の落下した地といわれる<丘の下>を訪れる。しかし来て早々に、星珠を盗まれてしまった。トウジィは星珠を取り戻すために、星珠を集めているという故買屋を訪れる。
――まったく琥珀王樹の舟を浮かべるような話だ。
村の西にある浜辺には、かつて滅びた王国の、沈んだ宝が眠っている。そう信じた外の若者がまたひとり、ニリへ浜辺の洞窟への道案内を頼んできた。しかしその男は、これまできた余所者とは雰囲気が違う。戸惑うニリへ、男は昔話を語り出す。
「幻覚」をテーマに視覚、聴覚、嗅覚で集めた短編集。完全に独立した短編ですので、どれから読んでも楽しめます。
B7版の3冊を厚紙とゴムで束ねた手製本です。短編それぞれが1冊の本となっており、バラバラに持ち出すことが出来るようになっています。そのまま読むもよし、手帳に挟んで持ち出すもよし。お好きなようにお楽しみください。4冊目の書き下ろし幻覚短編がもしかしたらつく…かも!?(追加できそうな場合はtwitterにてお知らせします)
こちらは2015年2月1日に発行した本の、判型を変えての再版となります。誤字脱字の修正の他、「琥珀王樹の舟を浮かべ」のストーリーが少し異なります(web版とは同一です)。同じ本の再版となりますので、旧版をお持ちの方はお気をつけください。
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