僕には好きな子がいた。 同じ部活の、良く出来た後輩――不知火八代。その淡い恋は彼女の一言で呆気なく終わったけど、でも、それでよかったと思っていた。 そう、思っていたのだ。 別の女性と恋をし、付き合っては別れ、別れては付き合って――そして別れて。それを繰り返していた僕は、ひょんなことから、不知火八代と再会する。
「やっぱ、リコンするんだって」 年の離れた義妹がそう言った。 昨日まで赤の他人だった俺たちはある日から<家族>になり、そして直にまた、他人に戻る。 いつの間にか名前を呼べなくなった義妹。 「お兄ちゃん」から「ジュンちゃん」と名前で呼びだした義妹。 ――そんな俺たちが家族じゃなくなったら、どうなるんだろうか。
朝だ。ゆっくりと、瞼が上がる。 大好きな彼に抱かれた。幸せな倦怠感を抱えていた私に、彼はこう言った。 「あまね?」 私ではない、名前を呼んだ。 同じ顔を持つ、双子の姉。 同じ顔のはずなのに、私と違って、誰からも好かれて愛された――死んだ姉。
あれは、いつのバレンタインだっただろう。 「澪はオトコオンナなんだからこんなの似合わねーぞ」 彼の好きな女の子像が、女の子らしい子だと知った私は、彼の求める<女の子>になろうと努力した。頑張った。頑張って、頑張って――なのに好意を寄せてくるのはいつだって知らない男の子たち。彼じゃない。 父親の転勤をきっかけに、思い切って忘れようとした恋だった。
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