コテージ横の小川。足をひたして、遊ぶ。日の光が降り注ぎ、平穏な昼下がり。
「昼食ですよ」
トマスの声。立ち上がって足を拭き、サンダルを引っかけて走り出す。めっきり料理の腕が上がった副官殿は庭先のポーチにテーブルセットを出して皿を並べていた。
「焼き上がりましたから」
つくづく器用な男だ、とおかしくなる。石窯まで手作りして、今日の昼飯はピザだという。二人で摂る平穏な昼食。
「ああ、そうそう、チケット届きましたよ」
「ああ、おまえが生で見たいって言ってた、アレ」
「オーソドックスなんですが、白鳥の湖って言うんですよ」
「どんな話だ」
「それは見てのお楽しみ」
「えートマスのケチー」
「なら少しだけお話しましょうか…」
持っている本を開く。バレエの専門書らしい。白鳥の湖と書かれたページを開く。白い
チュチュを身につけた女性達。悲しそうな顔。トマスがその理由を話す。横にあるタブレットから有名な情景と呼ばれる曲を流しながら…が。情景の曲は…緊急呼出のブザーに取って代わっていた。