こちらのアイテムは2017/4/1(土)開催・第5回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第5回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

シュガードロップ・ブレイクアウト・上

  • 委託-33 (恋愛)
  • しゅがーどろっぷ・ぶれいくあうと・じょう
  • 二月ほづみ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 1,200円
  • 2017/4/1(土)発行
  • 新作。同名ゲームのノベライズです。
    (ゲーム本編のシナリオを元に、小説として加筆・習性の上再編)

    カバー付き、ページ数は確定後追加いたします。


    ★今回委託させて頂く予定の4冊のうち、どれかひとつ読んでみようかなと思って頂けるようでしたら、この本か「紫灰の日時計・上」のどちらかをおすすめいたします(^-^)



    (本文サンプル)



    一 皇女の帰還

     眩しい水面を見上げるような、白い微睡みの淵をたゆたう。
      ゆらり、ゆらりと、よせてはかえす、真昼の海の波のよう。
      不明瞭な夢の中では、たぶん、丁度午後のお茶が始まろうとしているところだ。 小さな芝生の中庭に置かれた一組のガーデン・テーブルに、三人分のティーセット。甘いお菓子の予感に胸が弾む。春摘み紅茶の清々しい香りに、思わずうっとりと息を吸い込んだ……ところで、ふいに目が覚めた。

     これからが美味しいところだったのに、と、少女は不満そうに身じろぎする。こめかみのあたりに置かれた大きな手が僅かに動いて、そっと彼女の頭を撫でた。太陽の光を集めたような、蜂蜜色の豊かな髪が、上着の背に無造作に広がる。柔らかいせいですぐに縺れてしまうそれを、長い指がそっと梳いて、整えた
     「そのまま、眠っておいでなさい、殿下。アヴァロンはまだ遠い」
      髪を滑る心地よい指の感覚と、聞きなれた声に逆に覚醒する。広々とした革張りの後部座席で、行儀の悪いことに、男の膝に頭を預けて眠り込んでいたらしい。それに気がついた少女は、驚いた様子で軽い体をパッと起こす。 「ごめんなさい、エリン。わたくしったら……」
      柔らかい頬を子供らしく紅潮させ、かすれた声でそう詫びた。
      傍らに座る男――エリン・グレイは、そんな少女を静かに見つめて、僅かに笑ったように見えた。ゆっくりと少女の方に向き直る所作に合わせて、長い、上等の絹糸のようなブロンドがサラリと肩からこぼれ落ちる。彫像のように端正な顔は表情に乏しいが、厳しいエリンが自分に対してだけはとても優しいということを、少女は誰よりもよく心得ている。
     「無理もありません。昨日の晩、遅くまで起きておいででしたから」
     男は、物心付くよりずっと前から傍にいる、彼女にとって最も近しい人間のひとりだった。
      父でなく、兄でも無く、またそれに近い存在として振る舞うことも決して無い彼のことを、しかし少女は父のように、兄のように慕っている。生まれて十二年、男は少女の保護者だった。

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