こちらのアイテムは2016/10/8(土)開催・第4回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第4回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

咲き分けの桜

  • 委託-35 (現代)
  • さきわけのさくら
  • 良崎歓
  • 書籍|A5
  • 20ページ
  • 0円
  • 2016/10/8(土)発行
  • 刀剣乱舞二次創作。燭台切×長谷部コピー本。無料配布です。

    長谷部はある日、自室で自分宛てではない文を見つける。
    あでやかな桜の柄の封筒の中に入っていたのは、「君に『特』が付いたらね」の一言だけ。
    送り主に返したいと、文を書いた刀を探す長谷部だが……。

    何故か長谷部にだけ冷たい燭台切と、そんな燭台切にいつの間にか惹かれていた長谷部のお話。

    ↓ 本文抜粋です

      *   *   *   *   *   *

     燭台切が、うつ伏せた長谷部の背中の紐を解いている。熱いからだが密着したかと思うと、長谷部は仰向けにされ、上半身をそっと起こされていた。ごとり、と音がして、甲冑とストラが傍らに積まれる。
     敵の血を吸ったカソックも、肩から抜かれた。抱き合うように上半身を抱えられ、背中にするりと手が回って来て、カマーバンドが外された。スラックスがそうっとたくし上げられて、ソックスとソックスガーターも取り去られてしまった。
     いつか、今剣と秋田がぶら下がっていた逞しい腕が、長谷部を軽々と抱き上げ、布団へと横たえる。抵抗する術もなく、掛け布団で肩までしっかりと覆われる。
     燭台切は、なぜか長谷部の枕元に座った。
     長谷部がおそるおそる見上げた燭台切は、泣き笑いのような顔でこちらを見つめていた。長谷部と視線がぶつかると、隻眼が眇められて弧を描く。いつもの冷酷な表情はどこにもなかった。
     ためらいがちに伸ばされた燭台切の手が、長谷部の頭にそっと触れた。返り血と汗でごわつく長谷部の髪を、黒手袋の指が梳いていく。壊れ物でも扱うように繊細な指の動きの一つ一つから、あふれるほどの思いが伝わってきた。
     ――燭台切に大事にされている。
     全方位に向けられる彼の優しさは、長谷部にだけはいくら待っても落ちてはこなかった。自分の心がいくら燭台切に傾いても、文をきっかけにますます見つめる時間が増え、聞けぬ声に焦がれても、彼からの関心は得られなかった。
     だからこれは、夢だ。燭台切のこころなど、夢でなくては手に入らないものだ。
     ――ああ、俺はいつの間にか燭台切を、こんなにも。
     それから先は考えるのをやめてしまった。夢でだけ得られる蜜なら、刹那だけでも喉を潤したかった。
    『燭台切』
     長谷部の声に、燭台切は『なに、長谷部くん』と聞き返す。慈しみに満ちた微笑みを浮かべて。
     名を呼ばれることは現実でも夢でも、初めてだ。そもそも、会話自体が初めてのように思う。それほど徹底して避けられていたのだった。
    『優しいんだな』
    『……そんなことはないよ。僕は酷い男だ』
    『酷い奴は、嫌いな俺の世話など焼かない。……これが例え夢でも、俺は嬉しい』
     燭台切の隻眼が大きく見開かれ、すぐにくしゃりと歪んだ。
    『そうだ。これは夢だよ、長谷部くん』
     髪を梳いていた長い指が、横たわったままの長谷部の顎をそっと掴んだ。燭台切の親指が長谷部の唇をなぞる。
     燭台切は、目を潤ませて、かなしげに笑った。
    『夢だから――今だけ、君を好きでいてもいいよね?』

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