こちらのアイテムは2016/10/8(土)開催・第4回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第4回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

その、幽かな声を

  • 委託-35 (現代)
  • その、かすかなこえを
  • 良崎歓
  • 書籍|A5
  • 208ページ
  • 600円
  • http://www.geocities.jp/silen…
  • その異能ゆえ、都会から逃げるようにやってきた山あいの村で、聖は瀕死のあやかしと出会う。
    異能に悩みながら成長していく少年と、人ならざるモノとのふれあい。
    現代恋愛ファンタジー、短編連作です。全12話+書き下ろし掌編。


    ↓ 本文抜粋です

      *   *   *   *   *   *

     がさがさという乾いた音がしばらく続いたのち、枯れた下草を掻き分けて、件の聖が顔を出した。足下は丈夫そうな革靴、ブーツとやらを履いていたが、つま 先から足首まで泥にまみれている。日陰は氷で滑り、日なたは陽射しでぬかるむ山道だったに違いないが、彼はそんなことはものともせずに詣でてくれたらし い。
     聖は「澪さま」とにっこり笑う。
    「お待たせして、すみません」
     聖の何でもない一言に目元が熱くなるのを感じて、澪は自分のことながら驚いた。考え出すときりがなさそうだったので、とりあえず返事はしておく。
    「ま、待ってなどおらぬ」
    「そんなこと、言わないで下さいよ」
     聖は澪の軽口を受け流すと、持参した敷物の上に膝を抱えて座った。準備のいいことに、鞄からさらに布団のようなものを出して自らを覆う。もこもことして、まるで冬毛に変わったかのようだ。
     澪もその隣に腰を下ろし、鼻の頭を赤くした聖の横顔を見た。いつもは頬も耳も赤いのだが、詰めものが垣間見えるはずの耳は、今日は耳当てで覆われていた。やはり、聖も特別に寒かったとみえる。
     おや、と澪は思わず聖の顔を見返した。何かがいつもと違うな、と感じたのは、獣の本能のようなものだっただろうか。
    「何ですか?」
     聖が、目を丸くしている。澪の無遠慮な視線にたじろいでいるようにも見えた。

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