職場に丸い男がいる。顔が丸いわけでも体が丸いわけでもないけれども、なんだか丸い。
だから私は彼のことを、こっそり丸井君と呼んでいて……。
ほんわかした恋愛ものです。
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丸井君
職場に丸い男がいる。
体型が丸いわけではない。顔が丸いわけでもない。
名前に丸が付くわけでもない。
角田時成というその男はしかし、丸いのだ。
私は心の中で、その男を丸井君と呼んでいる。
そのことは職場の誰にも言ったことは無く、まだ呼び間違えをやらかしたことも無い。完全に、私の中だけの秘密の呼び名なのであった。
営業職として中途入社してきた丸井君は、三年目になってもまだ、文具の場所を覚えない。一日に三回は、おずおずと私の右斜め後に立ち「あの、貝崎さん……すみません……」と、まず謝る。
私はいつだって、文具のストック棚に目を光らせていて、乱れを整え、どんなに寝ぼけたオッサンでもすぐに物品を見つけられるようにしている。それでもオッサンは、面倒臭さから「あれどこだっけ」と声をかけてくることがあるが。
まだ若輩の丸井君は、迷子のように棚の前をうろついてから、おもむろに謝ってくるのだ。
私は丸井君を振り返る。丸井君はいつものように、太い眉を八の字にして背をかがめる。
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