表紙・挿画 高井玖実子(タカイクミコ)
私は、誰も愛さない。
或る邪悪なる魔の一族と戦ってきた、白魔道士カルキ・赤魔道士ガルーダ・緑魔道士シュリー。しかし、彼らの力だけでは、一族を封じ込めるには至らない。限界を感じた彼ら三人は、強大な力を持つと噂されながら全く人前に姿を現わさぬ黒魔道士ヴィラバドラに共に戦ってほしいと呼びかける為、彼が隠れ住むと言われる小さな島に降り立ったが……
『小説BADOMA』(※リンク先はテキレボ7のシリーズ纏めページ)の前史とも言うべき伝説の魔道士達の十一日間を題材に採った、連作(?)短編集。
なお、こちら単独で「何かファンタジーっぽい作品」として読める作品にしていますので、元々のRPG『BADOMA』や勝手なノベライズ『小説BADOMA』を御存じなくとも全く問題ございません。
=== 以下抜粋 === 最後に、〝大地の子〟が残った。
最初に彼らと会った時も、そうだった。カルキが行き、ガルーダが去り、そしてシュリーが残る。そのシュリーもいずれは去り、私はひとり残される……。私は微苦笑した。出会いも、別れも、結局は私ひとりが残って終わるのだ。
『ヴィラバドラ……』
彼女は、私の名を呼んだ。
『ヴィラバドラ……』
『行くがいい。行って、お前の為すべきことを果たせ』
私は、穏やかに言った。大地の恵みの
黄金色に揺れる髪と、大海の底の
碧とを湛えた瞳とを持つ乙女よ。私の前に留まるな。お前には、汚れなき白い心の、高貴な魂を瞳に映すあの青年こそが
相応しい。
『お前は優しい。その優しさ故に目を曇らせるな。私は……お前達に愛されてはならなかったのだ』
『そんなことは決してないわ……』
彼女は涙顔で微笑んだ。
『現にわたし達は、あなたの表面の姿を突き抜けた奥にあるあなたの魂を愛しています』
『それがわからぬほど、私は愚かではなかった』
『ああ、だったら何故……!』
『だからこそ』
私は静かにかぶりを振った。
『愛される資格のない者が愛されてしまったからこそ、愛されてはならなかった者は、そうでない者より一層、その愛に報いるだけのことをしなければならないのだ』
彼女は息を呑み、声を詰まらせた。
───「十一日目」より