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【BL】火照り鬼灯

  • 有馬-26 (ローファンタジー)
  • ほてりほおずき
  • 瓜野
  • 書籍|A5
  • 24ページ
  • 100円
  • 2020/4/5(日)発行
  • 人の世を追われた物の怪たちが此岸と彼岸の狭間に作った、物の怪たちの、物の怪たちによる、物の怪たちのための廓、裏吉原に暮らす恋人たちの日常茶飯。  

    A5 / 24P(約10000字) / ウェブ再録  / 人外BL
    骸塚髑髏(がしゃどくろ/髪結い)×久木野々千年(火車/医者)
    ※表紙画像はイメージになります。実際は両更クラフト紙にモノクロ印刷、中綴じ製本です。
    ※4/5のJ.GARDEN48で発行予定だった新刊です。

     ■ もくじ
      ・「火照り鬼灯」
     ・ 「冷たい肋骨の余剰」
     ・「曼珠沙華咲く野の原にて」

    ■ 本文サンプル

    「火照り鬼灯」

     仲の町から西河岸へと伸びる揚屋町は吉原における商人と職人の町だ。通りの中央に渡された溝板に一定間隔で置かれた用水桶やたそや行灯は他の廓内の町と変わらないが立ち並ぶ店に妓楼は一軒も見当たらない。華やかな仲の町とは一線を画した表店には暖簾を吊るした台屋や小間物屋が連なり、行き交う人々は当然ながら商人風の者が多い。細々とした家屋が立ち並ぶ裏長屋にはぼて振りや大工などの職人が肩を寄せ合うようにして暮らしていた。
     そんな揚屋町のちょうど真ん中辺りにある二階建て長屋のうちの一つが患者であれば妖怪人間問わず拒まずの金看板を掲げる「万年診療所」である。簡潔に屋号を記した木板を土埃が白く霞ませる様は全体的に鄙(ひな)びた印象を与えるが、それとは裏腹に名医として知られる「先生」を頼って門戸を叩く者は連日少なくない。しかし今日に限っていえば、訪れる患者の数は朝から疎らなのだろう。閑散とした佇まいは裏吉原特有の昼間の静けさの中で息をひそめているように見えた。戸口の前にぽつんと置かれた素焼きの鉢の鬼灯も健気に葉を広げ、まだ青い実を鈴なりに付けているがどこか所在なさげだ。
      そんな診療所の前に影を差したのはどう見ても病とは縁遠そうな男だった。逞しい長躯に刈り込んだ短い黒髪の似合う精悍な顔つき、反して嵌め込まれた瞳は白眼を持たぬゆえにそこだけぽっかりと穴でも空いたように無機質だ。矢鱈縞の着流しに柳色の帯を締め、骸塚髑髏(むくろづかどくろ)と己でつけた名乗りのとおり、しゃれこうべを象った根付が腰の辺りで小さく揺れていた。彼は鬼灯の前にしゃがみ込んだかと思えば無骨な手を伸ばし、思いの外丁寧に枯れた下葉や虫食いをむしり取ると土の湿り気を確かめている。
      こうして折角譲り受けた鬼灯が連日の暑さによって萎れてしまいやしないかと気を揉んでいるのは概ね髑髏の方であって、肝心の先生は花が咲こうが実がなろうが最終的にすべて生薬にしてしまうのだからいいじゃないかとろくすっぽ興味のない態度だった。医者としては大変合理的で優秀といえるのだろうが、せめて実が色付くまでは楽しもうという情緒もないというのは如何なものか。とはいえそれもまた彼らしいといえばらしいのだけれど。
    「先生、邪魔するぜえ」

    (後略)

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