◆概要
「君が美味しそうって言うからにはとてもやばいオカルトな気しかしないんだけど」
「大丈夫だ大丈夫、お前が喰われそうになっても吾輩が助けてやるからな!」
「一応助けてはくれるんだ……」
「吾輩の寝床とエサがかかっておるからな」
◇
幽霊や怪異のたぐいが見えたりそれらを引き寄せたりする――いわゆる「オカルト引き寄せ体質」の男子大学生が、ある雨の日に白くてでかくてもふもふの猫(?)を拾ったところから始まる、ほんのり続き物じみたローファンタジー風味にオカルトとほんのりホラーで味をつけたお話。「テキレボねこマップ! in テキレボEX2」 参加作。
・テキレボEX2新刊です。 表紙込み68ページ。
・収録話数は5。うち一話はテキレボEX2Webアンソロ提出作
・主観ではありますが、雰囲気はローファンタジー6:オカルト3:ホラー1くらいです
・おまけで副読本と言う名の作品&登場人物紹介ペーパーがついてきます
◆本文サンプル
公園の隅の方にちょうどよく置いてあるベンチ。そこに腰掛けてふう、と息をつく。きたばっかりのはずなのに、やけに疲れたなあ。まあ、原因は……道に迷ってる人に話しかけたと思っていたらオカルト存在だったから慌てて逃げてきたからなんだけど。
そういうわけだから、そのオカルト存在が今どうなっているかは知らない。あんまり知りたいとも思えない。けれど、逃げている途中でうっかり猫を落としてきてしまったことは事実だから……その猫が、食べてしまった可能性が高いんだろうなあ。
「紗霧~~~さっきの怪異存在、そんな美味くなかったぞ~~~」
……ほらね。
「やっぱり食べちゃったんだ……」
「お前が吾輩を落としていったからだろう!?」
「落としたことについては謝るけどさ、食べるのはどうなの……」
ぽてぽて、という効果音が似合う気がする。こちらへ向かって走ってきた白猫ことササメを抱き上げ、それからモフる。この猫、猫というにはやたら大きい。しかもたまに体積が変わってる。雑に表現したらしゃべるぬいぐるみと言ったところだろうか。毛玉って呼んでも問題ない気もするけれど。実際丸まってる姿は毛玉だし……。
「何だ知らんのか。なんかアレな怪異が落ちてたら食うのが礼儀なのだぞ」
ところでこの猫の喋り声が聞こえているのは今の所俺だけみたい。オカルトに詳しい友達に見せたら何か聞こえるとか言わないかなあとは思ったけど、もう少し経ってからでもいい気がする。なんかちゃんと事前に説明しておかないと、猫の方から喧嘩を売って大変なことになる気がするし。
「そっかぁ」
「気の抜けた返事はやめんか!」