【詩歌】サラダ遅延

• 洞爺湖-09 (BL)
• さらだちえん
• 空見タイガ
• 書籍|B6
• 700円
• 2021/1/22(金)発行
• 「愛」はあらゆる関係を搾取する、サラダ。

  紹介

  詩集です。どんな詩かというと、連続性のある詩です。連続性とはなにかというと、遅れただけ遅れるということです。はじめに遅れたにもかかわらず、おわりで間に合うことはありません。なぜかというと、彼らは乗り換えというものを知らないかわからないかわかりたくないからです。彼らとはだれかというと……。
  
  

  抜粋

  更田恭一
  
  チェックディジットに引っかかる子、雨後のたけのこ。
  あまりにも無機質なエラーは弾性限度を超えて僕の心に永久ひずみを残した。
  もう何もするまい。どうせ出端をくじく。

  
  

  戸惑赤子
  クイックリターンピッチで惑わせたあげく、ボール、あるいはボークになって勝手に追い詰められる友。
  ストレートを投げれば速いのに僕をコントロールすることに夢中で、いつも制球を乱している。
  こうした対戦が十年も続けば、押し出しのグランドスラムによるビッグイニングがきてもいいはずなのに、反撃のチャンスはやってこない。

  
  

  稲前義生
  
  「僕は人類の被害者だ。僕がクソなんじゃなくてみんながクソをした集大成が僕なんだ。君たちの悪意が少しずつ伝播していって最終的に一本の激しい濁流となって僕の背中を流れていったんだ。人を責める前に、今までの人生ですべての人に真摯な愛情を貫き通せたのか考えてごらんよ。君の杜撰な態度が僕をこうしたのかもしれないんだ。なあ。こっちは悲哀者なんだ。ズボンのポケットの中に手をつっこんで少しぶにぶにと柔らかいグリップを握って長く息を吐く。子どもが男と女に挟まれる形で両手を繋いで歩いている。恋人つなぎをしたカップルが横を通り過ぎる。上等なスーツを着た男が電話をしながら追い抜く。なあ、僕の方が弱くて強いんだぞ」