こちらのアイテムは2020/12/26(土)開催・Text-Revolutions Extra 2にて入手できます。
くわしくはText-Revolutions Extra 2公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

【オカルト】【伝奇】【ホラー】【新刊】拝み屋の日々2

  • 有馬-46 (ローファンタジー)
  • おがみやのひびつー
  • 歌峰由子
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 300円
  • https://estar.jp/novels/25491…
  • 2020/12/26(土)発行
  • 金髪グラサン、シルバーピアス。ストリートファッションに錫杖を担いだ、彼の名前は狩野怜路(かりのりょうじ)――泣く子も黙る(?)敏腕の拝み屋である。

    広島県北の田舎街、巴市に暮らす怜路のもとに、得意先の紹介で一件の依頼が舞い込んだ。
    広島市郊外の住宅街で、酷い霊障が起きているという。
    時期は折しも秋の「土用」の真っただ中、震源地らしき空家はたった二か月の間に、一家四人が次々と凄惨な死を遂げた、曰くつきの家だという。
    家の中の異様な有様に戦慄する怜路。一時撤退を決めた彼の前に飛び出して来たのは――小学生の女の子!?

    ヤンキーな山伏と『ガンボ(※広島弁』なランドセル女子のデコボココンビは、凶悪な「霊障」の根源を退治できるのか。

    エブリスタ・カクヨムでWEB連載の巴市の日々シリーズ(商業タイトル:陰陽師と天狗眼)、第一部と第二部の間話を書き下ろします!(※あらすじは予定のものです)
    (「2」なのは、無印の「1」があったからなのですが、そちらは「亡霊屋敷」として商業出版に吸収されたので絶版しております。リンク先にて読めますのでよろしくお願いします)

    購入サイトはこちらです⇒  https://text-revolutions.com/staffdaikou/products/detail/1117

    -----------以下、前話(無印)の冒頭部です。雰囲気確認にどうぞ-----------

     狩野怜路は個人営業の事業主である。  ただし、探偵でも骨董屋でもなければ、殺し屋でもない。

     ただの「拝み屋」である。

    「オン キリキリ バザラ ウン ハッタ!」
     印を組んで結界し、部屋と外界を切り分ける。古くさい和室一間のアパートには、一畳ほどの押入れが付いていた。黒い枠に茶色く焼けた襖紙の、半端に開いたその襖の奥から、どろりと何かが流れ出している。
      タールのような粘液は、同じく焼けてささくれた畳の上を這って部屋に広がっていく。同時に、怜路に悪臭が押し寄せた。
      哺乳類の、臓腑が腐った臭いだ。
     水中動物のそれとは一味違う腐敗臭。理性や表面的な感情よりも、もっと奥を抉る嫌悪感は、正しく生存のために鳴らされる警鐘である。
     「臨兵闘者皆陣烈在前――」
     人差し指と中指と立てた刀印を抜き、五横四縦の九字を切る。腐臭を放つタールが消し飛ばされ、結界の中が清められた。しかし、タールの発生源であった押入れの中に、強烈な邪気が残っている。右手の刀印を結んだまま、土足の怜路は押入れの前に立った。色の薄く入ったサングラスを外し、静かに襖に左手を掛ける。ハイカットのバスケットシューズが、ざり、と畳に土を擦り付けた。
      勢いよく襖を引いた。薄暗い押入れの上段奥に、より一層の闇がたぐまっている。ぶわりと音を立てる勢いで、闇が怜路に触手を伸ばした。刀印でそれを切り払う。
     日本にあっては異彩を放つ、緑銀の双眸がきらりと光った。にやりと怜路は口の端を上げる。
    「ナウマク サンマンダボダナン インダラヤ ソワカ」
     パーカーのポケットから独鈷杵を取り出し、闇の奥めがけて打ち込んだ。
      紫電の光が迸り、闇が全て灼き払われる。その奥にあったのは、布に包まれた一メートルほどの棒だ。躊躇なく怜路はそれを掴む。カチャカチャと金属が小刻みに暴れる音が、布の奥からし始めた。鍔鳴りだ。
     同時に、男とも女ともつかぬ金切り声が怜路の握る棒――日本刀から響く。眼前に陽炎が立ち昇り、人の形をとって怜路に襲いかかった。
     「――砕」
      日本刀の両端を掴み、鋭く膝を上げる。めきっ、と鈍い音をたてて、日本刀が真っ二つにへし折れた。声ならぬ断末魔が響く。
     「おし、完了」
      布に包まったまま、くの字に折れた日本刀をぽいと床に放って怜路はサングラスを掛けなおす。金色になるまで脱色した髪を手櫛で整えると、耳元でシルバーピアスが揺れた。押入れの奥から独鈷杵を拾い、パーカーのポケットに再び突っ込む。
      あの日本刀の所有者は怜路ではない。どんな謂れの、どんな値打ちの刀かも知らない。ついでに言えば、何の事情であんなものが憑いたのかも興味はない。
      なぜなら怜路は、探偵でも骨董屋でもなければ、殺し屋でもない。
      ただの「拝み屋」だからだ。

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