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【ハイファンタジー】BIND CURSE

  • 嬉野-02 (ライトノベル)
  • ばいんどかーす
  • 六神
  • 書籍|A5
  • 108ページ
  • 600円
  • <一章>




    争いは空しい。
    得ることより、失うものが多い。
    話し合いで解決すればいいと、言葉を操る生き物、人は言うけれど、暴力で圧力をかけて来るもの、言葉の通じない相手にはどうすればいい。
    己の領域を侵すもの、相容れぬ存在。敵は、どこにでもいる。そして自分自身を確保する為には……やはり、戦うしかない。
    そう、戦うしかないんだっ!
    少年は手にした槍をきつく握り締める。視線は一点を集中して逸れることはない。だが、周囲を警戒することも忘れなかった。敵は眼前の相手だけではない。高い石壁の上から、彼を見下ろす複数の視線を感じる。
    鋭い視線は一級の戦士にも劣らない強さを秘めていたが、彼はまだ若い。青年と呼ぶにはやや幼いくらいだ。
    少年は、すんなりした手足に、日に焼けて健康そうな肌をしている。適当に伸びた髪は、色素が薄いのか、日に透けると金茶色に見え、瞳も同色。
    そして真剣な眼差しで、己の敵を見据える。
    「……フリウ」
    彼の斜め後方から、声がかかる。一人の子供が、不安そうな顔で少年……フリウを見上げている。子供は赤紫の髪だが、前髪の部分だけ金色、そして瞳は猫のように瞳孔が細く縦に走り、色は紫。
    「 ムギか」
    フリウは顔も向けずに答える。
    「手を出すなよ。これは、俺と奴の問題だ」
    ムギと呼ばれた子供は、複雑そうな表情をしながらも、後ろに下がる。
    フリウはそれを気配で感じながらも、眼前の敵に全神経を傾ける。
    秒殺の使徒。……<カオス・ウィザード>。奴はこの辺一帯の元締めらしく、強力な統率力と破壊力を持ってフリウの前に現われ、これまでに幾度も攻撃を仕掛けてきた。実際、術の類を使えるわけではないが、そのあまりの素早さに、まるで幻影でも見せ付けられているような気に陥る。
    そのやり口に彼は何度も煮え湯を飲まされ、その度に反抗してきた。だがこの狡猾な相手の前では、すべてが徒労で終わった。
    そして、万策尽きた彼はついに決心した。
    ここで、はっきり決着をつけてやる!
    フリウは愛用の槍を構える。槍の全長は彼の身長よりも長く、穂先は突くための切り裂きの他に、斧とその反対側に鉤爪のように尖った刃を持っている。
    彼は槍を携え、じりじりと間を詰める。
    カオス・ウィザードは半身を反らし気味にして、妙に威圧的な眼差しでフリウをじっと見ている。奴の仲間達も、壁の上で事の成り行きを見守っていた。
    緊張の糸が限界まで張り詰められ、弾ける。
    「覚悟しろ、カオス・ウィザードっ!」
    フリウはカオス・ウィザードに突っ込む。
    対する相手は、フリウの武器など恐れる様子もなく、逆に突っ込んできた。相手の鋭い凶器の先端が、彼の顔面を狙って急接近する。タイミングを狂わされたフリウは、真横に倒れそうな勢いで身体を傾けて攻撃を避け、お返しとばかりに槍を振るう。しかし体勢の崩れた状態で正確な攻撃ができるはずもなく、あっさり見切られてしまった。しかも、槍を振り切った瞬間を狙ってカオス・ウィザードは彼の背に蹴りを入れた。
    元から傾いていた身体は、勢いのままに転倒する。
    「っ! この野郎!」
    フリウは即座に立ち上がると、再び両手に槍を握り締めて走り出した。
    「さぁっ、かかって来やがれ!」
    カオス・ウィザードはこちらの様子をうかがうようにしていたが、フリウの勢いに触発されたか、相手も彼に向かって突撃する。それを見たフリウの鼓動も早まり、彼は口から息を吐いて両手に力を込めた。
    それを見た相手は、フリウを目前にしてさらに加速する。そして彼の攻撃をするりとかわし、カオス・ウィザードは先程のフリウのように彼の足元で身体を傾け、地面すれすれを抜けて背面に回る。フリウは奴の頭上を狙って槍を振り下ろしたが、カオス・ウィザードの猛烈な速さに空振りに終わった。
    カオス・ウィザードはフリウの攻撃を避けると、今度は一気に跳び上がった。
    「 くぅっ!」
    おりしも晴天。太陽の中に入られ、眩しさのあまりフリウは狙いが定められない。
    ( ここまでかっ!)
    諦念が胸中をよぎる、だが
    (いやっ、俺はまだ負けてねぇ!)
    フリウは足が地面に埋まるほど踏み込むと、一点を狙い、天に向かって槍を突き上げる。
    と、フリウの前に、何か生き物が割り込んで来る。丸っこい体型の、とても大きなリスだった。長く伸びた後足で、文字どおり跳ねるように飛び込んできた。
    「……ミリス、やっちゃって」
    かけられた言葉と同時に、リスの太い尾が幾つにも別れ、そこから白い光が迸る。光は衝撃を伴ってフリウを弾き飛ばし、余波は周囲に拡散する。さすがのカオス・ウィザードもこの不可解な現象には驚いたらしく、即座に戦意を収め、飛んで行ってしまった。
    賢明な判断である。
    フリウの方は、数メートルも吹き飛ばされた。地面に身体を打ちつけた衝撃に加え、全身を駆け抜ける痺れに似た痛みに声も出せずにもだえる。
    「フリウ。あんた、なぁーにカラス相手に死闘を繰り広げてるわけ?」
    「……ピュティア。お前こそ何しやがる」
    ようやく首だけひねって見上げた先に立っていたのは、一人の女だった。飴色の髪を管飾りと布でまとめた変わった髪形をしている。派手な頭のおかげで、遠目でも見間違えたことはなかった。
    「何って、放っておいたら何時まで経っても終わりそうになかったから。手っ取り早く場を収めてあげたの」
    彼女の腕に、先程の生き物がちょこんと乗っている。
    「だからって、人間相手に魔物の攻撃を入れるか、普通」
    「魔物じゃなくて、従魔。クロノスに所属する騎士なら、カラスじゃなくて、もっと違う奴を相手にしなさいよ。大体、カオス・ウィザードってなによ、あんた馬鹿じゃない?」
    「うるせぇ! 俺は……俺はこの畑を守りたいんだっ!」
    フリウは、目の端に涙を溜めながら叫んだ。
    そう、彼が相手をしていたのは、多少、狂暴な所が目に付くが、ただのカラスだ。そもそも、そのカラス達がフリウの畑の農作物を食い荒したのが争いの原因だった。
    ……彼は、畑を守る為に必死だったのだ。

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