中華風ファンタジー長編/Boy Meets Girl & 恋愛(読み切り)
広大な大陸の片田舎で、少年カイリューは不思議な少女メイシンと出会う。
神の名を持つ鬼と妃の物語。
「誰かを好きになるなんて、ものすごく難しくて、ものすごく簡単だったんだ」
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俺より体が華奢で小さくとも、崖の上から落下してくる自分と同じような年代の人間を受け止めようだなんて、とっさとはいえ、どうして思ってしまったのだろう?
悲鳴をあげながら落ちてきた女の子を受け止め、俺はそのまま彼女の下敷きになって潰された。落下の衝撃は、予想していたより遥かにデカかった。
落下のショックのせいか、女の子は意識を失っていて、俺の腹の上でぐったりしている。俺はというと、重力に従って加速度を増した彼女との衝突と重さに耐えかねて仰向けに倒れ、背中と頭を激しく打ち付けた痛みに声も出せずに涙目になって呻いていた。
だがいつまでも痛いとか言ってても埒が明かない。とりあえず女の子にどいてもらわないと、俺は一向に動けないんだ。
俺に覆い被さるようにして失神している女の子の肩に手を掛け、ぐいとその体を押し上げる。片肘をついて俺は自分の上体を持ち上げ、更に女の子を動かそうと、彼女の背に腕を回した。
前髪が触れ合うような至近距離で、はた、と、彼女と目が合った。
くすんだ金色にも見えるハシバミ色の瞳。ちょっと俺の目の色と似てるかも。俺が太陽の下では金目に見えるのは、お袋譲りだと聞いた事がある。金色だの金褐色だのなんて珍しい色だから、まさかこんな所で同じ目の色の人間に合うとは思わなかった。
でもこの女の子、一体いつ意識を取り戻したんだ? まぁいいや。意識があるなら自分からさっさとどいてもらおう。
「悪ィけど、どいてくんね? あんた、重……」
「きゃあっ!」
女の子は顔を真っ赤にして、俺を突き飛ばした。
「あでっ!」
俺の後頭部は再び地面に激突。さっき打った所と同じ部分を打ち付け、マジで頭割れるかと勘違いしそうな衝撃を受けた。こりゃ、たんこぶ確実だな。
「ぶ、無礼なっ! な、何をなさるんですか!」
女の子が両手をぶんぶん振って、甲高い声できゃんきゃん喚く。俺の腹の上で。膝立ちになって。
一点に重心掛けて腹ぐりぐりするなよ! 内蔵が口から出ちまうだろうが! むしろ早くどけ! でないと俺、死ぬから!
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