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【ハイファンタジー】【和風】きまぐれ天狗と楓のうちわ

  • きまぐれてんぐとかえでのうちわ
  • 天海六花
  • 書籍|新書判
  • 84ページ
  • 500円
  • 2019/03/21(木)発行

  • 和風ファンタジー短編連作集(読み切り)

    旅の巫女と自称護衛が、小天狗に振り回されつつも旅先で美味しいものを食べまくるお話です!(きっと旅の目的忘れてますw)
    ほんわかほのぼのコメディ調の和風ファンタジーです。

    「儂は偉大な天狗様ゆえ、まんじゅうを所望するぞよ」

    【残部僅少】

    --------------------------------------------------------------------------------------------------

    「注意ったって……そのバケモノはどこにいるんだ?」
     面倒臭そうに大股で周囲を歩き出す千歳丸。適当に辺りを見回すが、それらしい忌生物は見当たらない。それどころか野生動物一匹見当たらないのだ。
    「お嬢の勘違いじゃないのか? この辺にゃ誰も……」
    「ふぎゃっ!」
     千歳丸の足元で子供の声がした。ぎょっとして自分が今、不注意で蹴飛ばしてしまったものを見て、千歳丸は首を傾げる。今まで全く“それ” に気付かなかったのだ。
    「……チビ。お前いつからそこにいたんだ?」
     白髪の髪に小さな頭襟(ときん)を乗せ、一枚歯の高下駄を履いた、妙に小柄な子供だ。その背にはカラスを連想させる黒い羽根が申し訳程度にくっ付いている。
     白髪の幼子は黒目がちの大きな目をつり上げ、千歳丸を睨み付けた。
    「儂を解き放った事については褒美をやろうかと思うておったが、ろくに前も見ずに儂を蹴り飛ばすとはいい度胸だの! 小僧!」
     見た目通りの幼子らしい甲高い声ではあるが、言葉遣いは妙に年寄り臭く、態度も居丈高だ。
    「はぁ? 小僧って俺の事かよ? てめぇの方がガキだろ」
     千歳丸は腰に手を当てて白髪の幼子を見下ろす。
    「ええい! くそ偉そうに儂を見下ろすでない! ニンゲン風情が! 平伏せい!」
    「意味分かんね。お嬢。忌生物なんかいねぇぞ。変なガキならいたけど」
     こゆずは術に使う紙人形を手にしたまま、困惑したように唇へ指先を当てた。
    「ええと……その子、天狗の子です。忌生物ですよ。たぶん千歳丸さんが壊した封印の」
    「は?」
     千歳丸は間抜け面で問い返す。
    「ほう。そっちの娘っ子は儂の偉大さを分かっておるようじゃな。そなたの見立て通り、儂は偉大な天狗様じゃ」
     白髪の幼子──小天狗はふふんと鼻を鳴らす。
    「まだ子供なのに封じられていたなんて、随分悪さが過ぎたのですね」
    「儂は儂のしたい事をしておるだけじゃ! 何が悪い?」
     胸元に手を置き、こゆずは首を傾げる。
    「どんな悪さをしました?」
     小天狗は短い手足を器用に絡め、ふん反り返る。
    「儂は悪うないぞ。通り道の畑が邪魔だったゆえ潰してやったり、腹が減ったゆえニンゲン共の家屋に入って鍋を平らげてやったりしたの。儂の邪魔をする方が悪いのじゃ」
     こゆずはふぅと嘆息し、紙人形を指先に挟んだ。
    「やはりあなたは封じなければいけないようです。悪戯という程度では済まされませんよ。大事な畑を潰してしまうなんて。千歳丸さん、掴まえておいてください」
    「おうよ」
     千歳丸が小天狗を捕まえようとしたが、小天狗はひらりと身をかわした。そしてからかうように千歳丸の頭の上にちょこんと立つ。
    「てめっ……!」
     見た目通り、体重はさほど重くはないのだろう。それに背中の羽根をパタパタと動かしている。小さな羽根ながら、多少は浮遊できるらしい。
     千歳丸はギリギリと歯軋りしながら、頭の上に腕を伸ばす。しかしその腕からも、小天狗は身軽な動作で逃げ回る。半ば自棄気味に彼は腕を振り回したが、指一本掴めない。
    「せっかく封印が解かれたというに、またおとなしく封じられるような儂だと思うてか? ちょうど体がなまっておったところじゃ。遊んでやるから儂を捕まえられるものなら捕まえてみぃ!」
    「ンだとこら! 人の頭の上に……くそっ!」
     千歳丸が天狗の足を捕まえようとするが、天狗はまたもひらりと飛んでかわす。そして思いっきり舌を突き出した。
     あまりにも単純な挑発だが、短絡思考の千歳丸の頭に血を昇らせるにはそれで充分だった。


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