二階から騒がしい声が聞こえてくる。
梅岡貴九郎は団扇で顔に風を当てながら、天井を仰ぎ見た。
今日は孫が友達を連れてきて、二階で遊んでいるのだ。同じ中学に通う友達一人と、幼馴染で私立中学に通う前蔵涼一。そして孫の想良(そら)を合わせて三人の中学二年生が、二階に陣取っているんだから……家の中が静かでいられるわけがない。
午前中に庭仕事を片付けて疲れたから、午後は昼寝をして過ごそうなどと、全く甘い考えであった。
夏の陽がまだ余力を残して輝いている間に、五時のチャイムが鳴った。息子夫婦は共働きで帰りが遅く、夕食は大抵貴九郎が用意するのだが……昼寝出来なかったせいか何をするのも億劫で、なかなかテレビの前から動けない。そんな風にぐずぐずしていたらあっという間に時間が過ぎ、柱の大時計が六時を打った。
「おーい想良、もう六時だぞ! 夕飯どうするんだ、皆で食べていくのか?」
階段の下から声をかけると、一寸間を置いて孫が部屋からにゅっと首を出し、見下ろしてくる。
「涼一だけ食べていくって!」
もう一人の友達は、塾なんだと言って、鞄を抱えて慌てて降りてきた。
「想良、漫画は明日返せよ!」
「わーってるよ」
孫息子は友人に手を振り、ゆっくりと階段を下りてきた。
「涼一君は?」
「上で漫画読んでる。じいちゃん、夕飯なに?」
「まだ考えてない。何が食いたいんだ?」
孫はタンクトップから伸びた腕を組む。
「ピザ食いたいなぁ……。宅配のヤツ」
この暑いのに、元気な胃袋だ。しかし、料理を面倒に思っていた貴九郎にしてみれば、なかなか良い案であった。
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