月明かりに伸びる自身の影に、何度も目を瞬かせる。
この長く細い影は、小さな魔物、ダルマウサギ族である模糊(もこ)のものには見えない。どう見ても、模糊のご主人様である禎理(ていり)と同じ、人間の影。模糊自身の動きに合わせて踊る柔らかい影をまじまじと見つめてから、模糊は今度は自分自身の、人間になってしまった身体をまじまじと見つめた。
人間になってしまった模糊の手は、傍らで眠る禎理の手よりも少しだけ大きい。森の中にある小さな洞窟の、冷たい地面に投げ出された禎理の手に、自分の手を重ねてみる。禎理のその手を、地面に敷かれた毛布の上に乗せてから、模糊はその毛布の、小さく余った部分に何とか自分の身を横たえた。
昼間の疲れからか、ぐっすりと眠っている禎理の身体は、ダルマウサギの身体で禎理にくっついた時よりも少しだけ、冷たい。こんなに儚く見える存在なのに、無茶ばかりする。肩に見えた古い傷跡にそっと唇を這わせると、長くなった腕で、模糊は禎理をしっかりと抱き締めた。ダルマウサギ族の短い腕では、こんなことはできない。薬草に似た、柔らかな禎理の匂いを胸に閉じ込めて、緩やかに瞼を閉じる。禎理と、ずっと一緒にいられますように。僅かに開いた瞳に見えた、欠けた月に、模糊はそっと、祈った。
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