雪は絶え間なく螺旋を描き、じっと見ていると眩暈がした。
その隙間を、小さな光がいくつも揺らめきながら横切っていく。
渡り星、と。
僕は、呟いた。
あの小さな光のひとつひとつが、誰かの言葉と想いを運んでいる。雪に反射して、硝子屑のように細やかな光を散らしている。
「ああ、あれはね」
と、彼は言う。
「先を急ぐ渡り星だよ。誰か死んだんだろう。そうでなければ、雪の晩に、星なんて」
彼は僕を小屋の中に招き入れた。草ぶき屋根の小さな小屋だった。彼は雪に似た銀色の髪と、鯨の故郷のような青い目をした青年だった。柄織の敷物の上に腰を下ろし、キセルを手にゆっくりと煙を吐き出していた。傍らには、年老いたフクロウが彼に寄りかかるようにして眠っていた。
「しばらく休んでいけばいいよ。この雪では、先を急いだところでどこにも辿り着けない。たまにいるんだ、君みたいに無謀な人」
これは、彼が雪の晩の退屈しのぎにと話してくれた物語だ。
遠い昔のことのようでもあり、
ついこの間の出来事という風でもあり、
あるいは遠い未来の物語なのかもしれなかった。
また、僕が決して辿り着けない遠い場所の出来事かもしれず、
この森を超えたすぐのところの出来事のようにも思われた。
「どちらでも構わないよ。物語は言葉で、言葉は何億年も、
何億光年も旅をすることができるのだから」
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