こちらのアイテムは2018/7/16(月)開催・第7回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第7回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

【SF】【ローファンタジー】【ハイファンタジー】【現代】【ライトノベル】蒼のデクストラ

  • B-21 (ハイファンタジー)
  • あおのでくすとら
  • 深海いわし
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 110ページ
  • 600円
  • https://sardine.halfmoon.jp/o…
  • 2018/5/5(土)発行
  • 戦闘艇に乗る少年と少女の出会いの物語「彼女は海の底」。
    「人類に炎を取り戻してくれたペンギンのお話」。
    魔王の独白「シアノ」。
    大学卒業後のすきまの時間「冬の花火」。
    消せない故郷の記憶「碧の空」。
    滅び行く世界で戦う少女の物語「彼は暗い夜雨の中に差し込んだ、一条の月の光のようだった」。
    故郷を目指す飛行機乗りの物語「Deserter’s 45 minutes」。

    サイト「雨の庭」や参加したネット企画に掲載している短編のうち、青・寒色系のイメージがあるお話を集めた短編集。

    掲載サイトのURLはこちら
    http://pluie.halfmoon.jp/novel/

    【本文サンプル】
     第五十八号保管水槽。
     立ち入り禁止区域の奥の扉には、そう書かれていた。
     もちろん夢だ。僕には立ち入り禁止区域の奥へ入る権限などない。よく音と光を反射する白い無機質な廊下は、僕が普段生活している閉鎖区画と全く同じ作りだ。特に疑問も感じないまま、僕は扉の前に立つ。決して開くはずのない扉は、まるで僕を待っていたように音もなく横へスライドして開いた。
     その向こうに広がるのは真っ青な水中世界。鳥籠みたいなフレームとガラスで覆われた、巨大な水槽だ。
     大小の魚の群れがきらめく群舞を踊り、トビエイの群れが鳥のように頭上を泳いでいく。色とりどりの鮮やかな熱帯魚、鏡のようになめらかに輝く銀色のダイアモンド・フィッシュ、大きな口とぎょろりとした恐ろしげな目をしたオニカマス(バラクーダ)。思い思いに、けれど一定の規則を守って秩序正しく泳いでいく魚の群れを、ときおり巨大なマンタが突っ切って乱していく。水面から差し込む光が、揺らめきながら彼らの鱗を光らせて、まるで夢のような光景を作り出していた。
     夢のような――そう、もちろん夢だ。扉を開けたらそこは海の中でしたなんて、現実ではもちろんあり得ない。
     夢のような風景の真ん中には、白いワンピースの少女が一人佇んでいた。少女は真っ直ぐこちらを見つめている。イルカみたいに好奇心に満ちた、黒目がちな瞳だ。色素の薄い青白い肌と髪もあいまって、何だか昔記録映像(ライブラリ)の中で見たベルーガが人間に化けたみたいだった。
    「こんばんは」
     僕と目が合った瞬間に、少女は微笑んでふわりと両手を羽ばたかせ、悪戯っぽく口を開いた。

       「彼女は海の底」より一部抜粋


        神殿から少し東へ行くと、そこはもう人類の住むところではなくなってしまいます。最低限の食料だけを持って、ゲオルグは未開の大地を進んでいきました。
     うっそうと茂ったジャングルを抜け、岩だらけの砂漠を過ぎ、険しい岩山を越え、真っ白な塩におおわれた大地を歩き……途中で出会った鳥や動物に何度も「海を知らないか」「原初の炎を知らないか」と尋ねながら、ゲオルグは旅を続けました。
     旅立ってから天空のお月様は三度細くなり、三度満ちました。けれどもそんなに歩き続けても、原初の炎に関する手がかりは一つも見つかりません。黙々と足を進めながら、ゲオルグもさすがにうんざりしてきました。
     真っ白に広がる塩の大地に異変が見えたのは、それから何日かたったある日のことでした。地平線の辺りに何か黒い点が見えたのです。それはえらくのんびりとした調子で、ゲオルグの前を歩いていました。数刻もたたずに追いついたゲオルグは、その奇妙な生き物にどう声をかけたらいいのか迷いました。
     ゲオルグの膝を越えるくらいの高さの、ずんぐりとしただ円形の体は、背中と頭が黒で、おなかは白という見事なツートンカラー。ひれみたいな両腕を広げて、とても必死な様子でよちよちと歩いています。ゲオルグの気配に気付いたその生き物は、立ち止まってじっとゲオルグを見上げました。
    「……何だお前」
     あまりにもけったいなその姿に、思わずゲオルグはそうつぶやいてしまいました。
    「鳥でヤンス!」
     奇妙な生き物は甲高い声でそう言いました。

       「人類に炎を取り戻してくれたペンギンのお話」より一部抜粋

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