二次創作ノベルMAP 様参加作品。
R18 刀剣乱舞 燭台切光忠✕大倶利伽羅 みつくり小説
検非違使戦で重傷を負った燭台切光忠を救う為に、本体『大倶利伽羅』の切先を光忠に向ける大倶利伽羅の話。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9166302 以下本文一部抜粋
僅かな灯りもない部屋に、衣擦れの音と欲を含んだ熱い呼気が充満している。 「……ぁ、」
「……っ、」
肌を叩く音、淫猥な水音に微かに甘い息を吐く音が混じり、燭台切光忠の広く厚い背に大倶利伽羅の両の爪が傷を付けた。
互いの上がった呼吸が鼓膜を響かせる。燭台切は一度強く腕の中の大倶利伽羅を抱き締めると、肘で身体を起こした。見下ろす大倶利伽羅の視線は緩く、額に張り付く長い栗色の髪が情事の激しさを物語る。涙か汗か判らない目尻の雫を、燭台切はその唇で拭った。
ふと、大倶利伽羅の手が伸び、燭台切の髪を撫でる。そのまま顔の半分を隠す前髪を梳くと、指先で右目を覆う眼帯に触れた。
「駄目だよ、伽羅ちゃん。」
徒に眼帯をなぞる手を取って、その指先に窘めるように口付けを落とす。特に意味も無かったのか、大倶利伽羅もそれ以上無理強いする事はなく、抵抗せずに燭台切がするに任せていた。
無防備に晒した褐色の額に口付け、ゆっくりと身体を起こした燭台切が自身の手でぞんざいに眼帯に触れる。
「格好悪いからね。」
格好良く、が信条のこの刀は、眼帯と今それに触れた手の手袋さえ、人前で外す事は無い。
「……格好悪いのか?」
今までも別段気にしていた訳でも無かったが、火照った身体が収まるまでの寝物語程度の興味で言葉を続ける。正面で見上げた男の顔は微かに眉尻を下げ、とても小さく笑った。
「うん。ここには君と離れた罪と、焼けた痕が有るから。」
刀剣男士が顕現した際、本体である刀剣と元の主の影響を受ける事が有る。大倶利伽羅の倶利伽羅竜の彫り物は顕著な例だが、その他にも同じ主の元に居た刀剣たちは同じ瞳の色だったり、刀派によって姿形に出る場合もあった。焼けた痕とは罹災した際に負ったもの。焼身で現存する燭台切光忠の影響で、焼けた痕が残っているのだろう。
では、罪とは。
光忠を吾等に嫁入らせ候へ――。付喪神であったとしても、所詮は物に憑く物。本体が人間の都合で渡り歩くのはよくある話。自身にその意志は無かったにも拘わらず、この男はそれを罪とする。その潔さと真逆の執着を裡に秘めた危うさを表に出す事はない。 「そうか。」
誓った訳でも約束をした訳でも無いというのに。だから、大倶利伽羅は一言、そう呟いた。
「優しいね、君は。」
指先を絡めて握っていた手の甲に態と音を立てて口付け、そのまま横たわる大倶利伽羅の顔の横に抑え付けた。再び上から覆い被さってきた男の表情は、ぞくりとする程艶っぽい。
「無理矢理でも見たければ、見られるのに。」
「無理強いすれば見せるのか?」
眼帯の下に興味が無い訳ではなかった。それでも眼帯の下に何が在ろうとも、大倶利伽羅は彼に対する自分の姿勢を変えるつもりも無ければ変わるとも思っていない。
次々に羽根のように降ってくる燭台切の唇を受けながら、大倶利伽羅は身体の内に溜まった甘い気怠さに身を任せた。
「……そうだね。僕は、」
優しく注がれる言葉は愛しい刀へと向けられて融ける。
「君の願いを叶えずにはいられないから。」
目蓋を閉じ、深く息を吐いた愛する刀の頬を撫で、声を顰めて念いを告げた。