ほのぼの掌編集。
背の高い木のてっぺんに、ぴんと立つ黄色い風船があって。それを見つけた大きな鳥は……。
収録作品:私の家・何になりたい・わたしのお母さん・どら焼き
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私の家
青くてきれいな空の下に立つ、一本の背の高い木の天辺の枝に、黄色い風船がからみついていた。
時折吹く風にビュンと頭を引っ張られ、ヒモがピンと伸びて。ゆらゆらしながらまた、直立不動に戻る。
そんな様子を見ていた鳥が、風船の近くによいしょと止まった。
「お願いです」
風船は哀しげに言った。
「私をつついて破かないでください。私には帰るべき所があって、待っている人がいるのだから」
鳥は首を傾げた。