こちらのアイテムは2018/7/16(月)開催・第7回 Text-Revolutionsにて入手できます。
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砂の棺 下

  • C-17 (ハイファンタジー)
  • すなのひつぎ げかん
  • 天海六花
  • 書籍|新書判
  • 228ページ
  • 1,000円
  • 2016/08/21(日)発行
  • 砂漠の国ウラウローを旅する「俺」とカルザス、そしてシーア。
    シーアが偽る過去を解きほぐしていく内に、三人はこの砂漠の国の過去と運命を知る事となり、混沌の流砂に飲み込まれ、翻弄されてゆく。

    「約束してはくれまいか?」

    関連作(webアンソロ)
    アンソロ「嘘」→ http://text-revolutions.com/event/archives/5416
    アンソロ「花」 → https://text-revolutions.com/event/archives/8992
    アンソロ「imagine」→ https://text-revolutions.com/event/archives/10446

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     空腹を感じて目覚めるカルザス。そういえば昨夜、シーアが騒ぎを起こしたせいで夕食を食い損ねたのだ。
    「おなか空きましたねぇ」
      カルザスは欠伸をし、のろのろと身支度を始める。
      やはり夢であったのだろうか。シーアと、シーアと呼ばれていた少女の夢。アーネスとアイセル、エルスラディアの夢。
      俺がそれらの夢を見る事に、何の意味があるのかまだ分からん。幸い今は多少なり時間の余裕がある。よい機会だ。カルザスに相談を持ち掛けるのも悪くなかろう。
       ──おい、カルザス。話しておきたい事がある。少々長くなるが……。
      宿で準備される朝食の時間までにはまだ多少の猶予がある。あの夢の話をカルザスに聞かせて、意見を求めてみたい。
     「はい、いいですよ。あ、でもお説教は嫌ですからね」
      ──そんな事ではない。俺は最近、不思議な夢を見るのだ。
     「夢、ですか?」
      カルザスが手を止めて首を傾げる。
      ──そうだ。古代魔導帝国エルスラディアというものを、お前も知っておろう?
     「ええ、知識としては。そう詳しくはないですけど」
      カルザスの実家は商家だ。商売に関するノウハウや算術以外にも、歴史や地理、古代文献なども幼い頃から学んでいる。エルスラディアの夢の事をカルザスに相談し、意見を求める事は必ず俺のプラスになるはずだ。
      ──俺はそのエルスラディアの……。
      俺が語り始めた時だった。ドアがノックされ、ノブがガチャガチャと回される。何者かがドアの向こうにいるようだ。
     「ああ、すみません。鍵を外してないんですよ。ちょっと待ってくださいね」
      カルザスが慌てて錠を外し、ドアを開ける。
     「おはよ、カルザスさん」 「おはようございます」
      シーアだった。
      ええい、間の悪い奴め。別にこのままカルザスに話し続けておってもよいのだが、シーアも何か用があって部屋を尋ねてきたのだろう。二人の会話を同時に聞けるほど、カルザスは器用ではない。

     ──俺の話はまた後日でよい。シーアの話を聞いてやれ。
     「はい。そうします」
     「え? 何が?」
     「ああ、すみません。セルトさんが何か話があるという事で、お聞きしてたんですよ」
      シーアは困惑したように指先を唇に当て、困惑気味にカルザスを見つめる。
     「邪魔だったなら……出直すわ、私」
     「大丈夫、お気になさらずに。どうせまたお説教でしたから」
      違うと言ったであろう、俺は。人の話を真面目に聞いておるのか?
      俺は憤慨するが、ここで文句を言おうものなら、やはりまた説教だと臍を曲げる。気に食わんが俺が引き下がるしかあるまい。
     「そう? じゃあ……」
      シーアは室内に入り、壁に寄り掛かって窓の外を見つめる。
     「カルザスさんて……本当に私を助けてくれるの?」
     「はい、もちろんですよ。改まって一体どうしたんですか?」
      シーアは長い髪を指先に絡め、目を閉じる。
     「高いところから落ちて……いえ、落とされるの。落とされて、助けを求めてるのに、誰も手を掴んでくれないの。誰も助けてくれないの」
      突然何を言い出すのだ? 混乱しておるか、寝ぼけておるのかどちらかだな。
     「沢山の命を奪ってきた私が、今更命が惜しくて助けてって言うのもおこがましいかもしれないけど……もし……もしもよ? カルザスさんは、私が殺されそうになってたら……どんな状況であっても助けてくれる?」
      シーアは苦笑し、床へと座り込んでぎゅっと膝を抱える。髪の隙間から覗く表情は固く、何かに怯えているようにも見える。
     「……胸を刺されて、そのまま高いところから突き落とされる。そういう夢、ずっと見るの。何回も、何十回も、何百回も。やっぱり報いかな……? そうやって私は殺されちゃうのかな、誰も助けてくれないのかな。そう思ったら、なんだかすごく怖くなってきて……」
      膝を抱えるシーアの前に、カルザスは屈み込んだ。
     「僕が助けてあげますよ。シーアさんが助けて欲しいと仰ってくだされば、僕が必ず助けに行きます」
      顔を上げるシーア。紫色の瞳に、カルザスの姿が映っておる。
     「今まで死ぬ事なんて、怖いとは思わなかった。でも、今は……怖い。すごく、怖い」
     「僕でよければずっと一緒にいます。頼りにならないかもしれませんけれど、僕に手伝える事があれば何でも仰ってください」
      自らの膝に顔を伏せ、シーアは片手を伸ばしてくる。カルザスはその手を握ってやった。
     「……おれ、あんたを信じるから……お願いだ。手を振り解かないでくれ。あんたを頼らせてくれ。おれの傍から離れないでくれ」
     「はい。頼っちゃってください。僕、力だけはありますから、シーアさんを担いでいく事だってできますよ」
     「……うん」
      シーアが顔を伏せたまま頷く。そして声を発てずに笑う。
     「……良かった……嫌だって言われたらどうしようって……こんな事、頼むなんて……ずっとずっと不安だったんだ」
     「僕は嫌な方と、ひと月もご一緒しません」
     「そうだよな。これからもよろしく」
     「こちらこそ」
      シーアはカルザスの手を離し、立ち上がった。

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