――KAITO、とは幾千幾万の歌声を持つ歌うたいのことだ。
KAITOは今でこそ有名な歌うたいだが、ここに至るまで彼は長い下積みの時期を過ごしてきた。不遇の時代、とも呼ばれているその時期が長かったせいか、彼にまつわる噂や伝説は妙なものが多い。
そのいち。KAITOの種なるものをアイスに埋めると小さな『彼』が増殖するとかしないとか。ちなみに埋めたアイスの銘柄によってその性質も変わるとのこと。
そのに。KAITOは首に巻いているマフラーが実は本体であるとかなんとか。なので、カイトから外れてもマフラーは独立して立つことが可能。ちなみにその間、本体と思われていたKAITO自身からは歌うたいとしてのオーラが無くなり、まるで抜け殻のようだとか。
そのさん。KAITO関連のイベントが決定した時にはファンの興奮により天は裂け地が揺れるとかなんとか。
その他色々と。KAITO関連イベントはHPのサーバーが落ちるまでが様式美だとか、KAITO関連の情報が流れてきてもまずは疑うところから始めるとか、KAITOの民なる存在もいて年に一度、民族大移動を行うとか、とかとか。
全て胡乱な戯言としか思えない噂の数々だが、恐ろしいことにKAITOにまつわる話、全てが実に潔白な真実だった。
――(本文より)