「音楽とは、心を癒す物語なのであ~る。分かるかね、佐々木君」
わかりません。僕、佐々木祐介は心の中で答えておいた。
口に出したら最後、目の前の変人は怒りまくるに決まっているのだ。
僕はオーケストラのホルン吹きだ。高校で吹奏楽を経験し、大学入学と同時にオーケストラに転職した。転職……? ちょっと違うかな。まぁともかく、吹奏楽ではなく管弦楽でホルンを吹いてみたいと思ったのがきっかけだ。
吹奏楽でホルンというのは少々隠れ気味である。
「楽器やってるんだ、なんて楽器?」「えーと、金管楽器のホルン」「トランペットより大きいやつ?」
会話にすればこんなものだ。
加えて曲中ではトランペットには敵わないうえに、見せ場もサックスに持ってかれてしまうのである。
まぁ、僕がオーケストラを選んだのはそれだけが理由ではないのだけど。
音楽変人である赤沼が目の前で何かを喋っていたが僕はそれをやんわりと無視した。
こいつは変わり者で、学科でも非常に浮いている。でも、僕は知っている。バイオリンを持ったこいつの印象は百八十度変化するのを。
ホルン吹き佐々木祐介と彼の所属するアマチュア大学オーケストラを主題にした一話完結式ノベルです。基本は彼の演奏した曲というテーマで、一曲一話な感じの小話チックに。
時系列もばらばらの予定です。連載が増えて来たら時間軸なんかをあわせてお伝えしますが、基本は個々に独立した物語を楽しんでください。
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