こちらのアイテムは2017/4/1(土)開催・第5回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第5回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

【FF7/レノ×イリーナ】まだ終われない間違いの中

  • E-10 (BL)
  • まだおわれないまちがいのなか
  • 藤代明日美
  • 書籍|A5
  • 32ページ
  • 100円
  • http://www.pixiv.net/member.p…
  • 2017/4/2(日)発行
  • ※別名義で発行したファイナルファンタジー7 レノ×イリーナの二次創作です※

    FF7レノ×イリーナ│ A5コピー│ 32頁 │ WEB再録




    「だから、無理に話さなくたっていいって──」

    「言わせてくんないんだ、そうやって」



    主に2013年~2015年に書いた作品からセレクトしたWEB再録集。
    かみ合わない歪な身体と心を寄せ合い、孤独を寄せ合うふたりの愛や恋には程遠くとも、それらに良くにた何かを辿る掌編集。
    過去の情熱の供養兼ときめきメモリアル(?)みたいな一冊です。
    お話はすべてpixivで読めますが年内に再度非公開にする予定なので紙で欲しいと言って下さる方向け。


    <収録作品>
    美しい空の果て
    まいごのこども
    requiem
    Dead Flowers
    GHOST
    猫と私と


    下にはサンプルと言いつつ掌編一本を全文公開

    ★sample★

     

    requiem


     独り言だから、まぁ適当に聞き流してくれたらいいんだけど。わざわざそんな前置きをしてから唐突に語りだされた言葉はこうだ。
    「なんつうかさぁ。自分の人生みたいなのともう関わらないって分かってる相手がこれから幸せになってるといいなって、一方的に願ったりする時ってあるじゃん。でもそういうのって結局、どっか知らない場所で適当にのたれ死んじまえって思う事と大差ないんじゃないかって」
    「……どういう意味ですか、それ」
     思わず顔をしかめてそう尋ねるこちらを前に、くしゃり、と軽く笑うようにしながらレノは答える。
    「言ったじゃん、独り言って」
    「聞こえたら返事くらいしますよ」
    「あー、そう」
     満足した、とでも言いたげにゆるやかに瞳を細めながら、レノは続ける。
    「だからさ、結局そいつがどうなるか責任取るつもりなんて無いのに、自分と関係ない場所で上手くやれよって勝手に思うのってなんていうか傲慢じゃん。逃げてるのと変わんないっつうか。だったらさ、自分の手は汚す気ないのに勝手に死ねって思うのとそう変わんないのかなって。そういうアレ」
     いつも通りのごく当たり前だとも言わんばかりの淡々としたその口ぶりとは裏腹に、告げられる言葉の持つ重みはずっしりと胸に突き刺さる。
     如何にもこの男の言いそうな事だと、そう思う。抱えきれないほどの物にきちんと向き合って、つく必要もない傷を負って、そのくせ、それに対して平気なふりをしたがる。
     
     こほん、とわざとらしい咳払いをした後、私は答える。
    「……まぁ、これも独り言なんで、別にどう思ってもいいんですけどね」
    「ナニ?」
    期待したかのようにそっと瞳を細めるその視線に、どこか促されるような心地になる。
    「苦しいですよ、憎むのは。それが何かの原動力になるって場合もそりゃああるでしょうけど、大抵の場合は黒い気持ちに押し潰されて、それで終わりです。二度と会えなくても関われなくても幸せでいてほしいってそう願う気持ちとは、全然別物だと思います。憎しみと祈りが同列だなんて、そんな事あるわけないですよ」
    「そういうもん?」
    「独り言ですから。どう思うかはご自由にどうぞ」
     話しながら、ゆるく閉じられた手の甲がそっとこちらのそれへと、数度ぶつけられる。もどかしいその合図にほだされるような気になりながら、解けた指の先でそっと、冷たいその手のひら包み込むように握りしめる。
    「居るんです? そんなにも憎い相手」
    「いちいち覚えてない、かな」
    「その方がいいですよ、絶対に」
     重荷は少ない方がいいに決まっているから。思いながら、いつしか指の先が、微かに熱を帯びている事に気づく。
    「……祈り、ねえ」
     感慨深げにレノはそう呟く。見上げたその表情がどこか誇らしげである事に気付いたその時、胸の奥でそっと、あたたかなものが溢れ出すのがわかる。

    「先輩の幸せは私が祈ってあげますね」
    「それもいいけど、どうせなら態度で示してくんない?」
    「出方次第になります、そればっかりは」
    「お前らしいね、そういうの」
    「先輩の方こそ」

     笑いながら歩くそのリズムに合わせて、微かに肩がそっとぶつかり合う。程よく感じるこの距離も、触れた先から伝わるかすかなそのぬくもりも、ふたり分の足音の刻む不揃いその音色も、すべてが心地よくて離れられない。


     出来ればこの人に幸せでいてほしい。なるべくなら、手を伸ばせば触れられるこんな距離で。
     
     微かな祈りが音も立てずに胸にそっと溶けていくその感触に酔いしれるようにしながら、私は繋いだ指のその先が解けないようにと、もう一度そっと結びなおした。

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