憂鬱な金曜をやり過ごし、土曜の夜を待って、下卑たネオンが視界のそこかしこで点灯する繁華街へと繰り出した。
そこから一本、人気の少ない路地裏に入ったところに、ひっそりとその店はあった。
ネットの情報を頼りにやって来たが、本当にあるものだ。
人目を忍んで入店する。俺の姿を認めた中年の男が、吸っていた煙草をすぐに揉み消して「いらっしゃいませ」と薄ら笑いを浮かべた。
「当店のご利用は初めてですか」
「…まあ、そうだが」
「フリーとパネル指名がお選び頂けます。パネル指名はプラス千円となりますが」
迷う暇もなかった。折角ここまで来て、適当なのをあてがわれてはたまらない。
「パネルで」と答えると、写真を何枚か目の前のカウンターに並べられた。
「今日の出勤はこちらになりますねえ」
写真に写るボーイのどれもが、手で目元を隠している。当然といえば当然だが、実際に入ってみるまでその素顔はわからないということらしい。
茶髪や金髪が目立つ中、一人だけ濡れたような黒髪のショートカットがいた。
そして、シャープな顎と、少し照れたように笑う口元がどことなくあいつに似ていて、こいつにしようとすぐに決めた。
名前が『カナト』と。名前まで似ているところがまたいい。歳も十八と若い。まあ、本当の年齢かどうかは知らないが、見た目が十八ならいいだろう。
このカナトに一発抜いてもらえれば、きっと俺の異常な感情も治まってくれるに違いない。
きっと俺は、ただちょっと単に若い男に興味があるというだけなのだ、きっと。