この世界に来てから、いろいろな事を知った。この世界に正式に移住してから初めて白薔薇亭に行ってみた。
「ようこそ、殿下」
オーナーはにこやかに迎えてくれた。視線をオーナーの腰あたりに落とすと小柄な、あの少年。
「ほれ、おまえも挨拶・・・」
押し出そうとするオーナーの手に逆らって、顔を埋める。
「嫌か」
首を振る。
「挨拶くらい」
「す、するような事・・・」
「おまえな、前は前だろ」
「でも・・・」
ぎゅーっとオーナーの服にしがみついている。
「痛い、いてーよ、リシィ、それ、肉、俺の肉っっ」
それでも放さないらしい。今日は精神的によくないらしい。
「おまえ・・・またあの薬、なのか」
頷く。
「そっか・・・」
副作用に精神障害を起こす可能性のある薬を服用しているとか聞いた。
「あの薬とは」
「精神に障害起こす恐れがあるんですよ、でも飲まないと生命維持が・・・」
「え・・・」
「研究所なら自由に出来るのですが、ここでは、ね」
オーナーの手が少年の頭をそっと撫でた。
「ただでさえ、内向的なのに・・・」
溜息をついたオーナー。
「リース夫人は」
「ご主人と出かけましてね、そういうときはここで預かるんです。本当は出来ない事ですが」
「出来ない・・・」
「前の家族は家族ではないんですよ、残酷かも知れませんが・・・この子の親は別