石ころを見て「……おいしそう」と思ったことはありますか?ある方も、ない方も、どうぞお腹いっぱい召し上がれ!実在する鉱物を食材に見立て、調理方法と食べ方を紹介した妄想短編集!百花蜜の別名。喝采だけを濾過、結晶化すれば青琥珀、加熱圧搾すれば再琥珀。どちらも酵母を含んで産出するため、水に浸しておけば琥珀酒に、没薬・松脂・葡萄酒・肉桂と混ぜれば煉香に。一匙の甘味は悪戯に唇を撫ぜ、二匙の黄金香は舌を誘う。三匙に熔ける飴色の囁きは、吐息を掬って、閉じ込めて。(鉱物調理帖「琥珀」)
掲載イラストは全てカラー。
タイトルに「鉱石」がついていますが、
本編『鉱石展示室』と直接関係はありません。
独立した短編集なので単独でお読みいただけます。
2018年9月にネット上で開催された「紙街04」に参加した折本を、
大幅に加筆・修正し文庫化しました。
掲載されている鉱石(有機物・岩石を含む)は以下の35種類です。
*を除いて、50音順に並んでいます。
- 琥珀(こはく)*
- 水宝石(アクアマリン)
- 黄玉(おうぎょく)
- 黒縞玉(オニキス)
- 遊色石(オパール)
- 橄欖石(かんらんせき)
- 白雲母(きらら)
- 孔雀石(くじゃくいし)
- 月長石(げっちょうせき)
- 煙水晶(けむりすいしょう)
- 紅玉(こうぎょく)
- 碧琥珀(コーパル)
- 黒耀石(こくようせき)
- 金剛石(こんごうせき)
- 砂金石(さきんせき)
- 柘榴石(ざくろいし)
- 珊瑚(さんご)
- 真珠(しんじゅ)
- 翠玉(すいぎょく)
- 赤鉄鉱(せきてっこう)
- 蒼玉(そうぎょく)
- 大理石(だいりせき)
- 電氣石(でんきいし)
- 天青石(てんせいせき)
- 虎目石(とらめいし)
- 土耳古石(とるこいし)
- 軽石(ぱみす)
- 春花崗岩(はるみかげ)
- 燧石(ひうちいし)
- 玄御影(ふゆみかげ)
- 碧玉(へきぎょく)
- 紫水晶(むらさきすいしょう)
- 瑪瑙(めのう)
- 砂岩(ワッケ)
- 蛍石(ほたるいし)*
-----紙面文章部分のイメージ-----
――アクアマリン【Aquamarine】 分類:バラ科バラ属ベリル種
構造:六方晶系 硬度:7.5 比重:2.7
原産地は古代オリエント。バラ科バラ属の蕾の別名。
春雨の雫をまとった若緑の蕾が水色の緑柱石に似ることから。
(土壌に含まれる金属元素によって赤色はビクスバイト、金色はヘリオドールとも)
春の柔らかい水宝石は手折ってそのまま生食が香り高く、一等美味。
花を愛でる場合は、蕾の摘み過ぎに注意。
花数が多い四季咲きのフロリバンダ系統の場合でも、
蕾を生食するのは一株につき春に一~二個までを限度とする。
残りは全て花期を楽しみ、散り始めの花弁を集めてジャムにするとよい。
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A6(文庫)サイズの1ページが2段組で、
上部が鉱石のイラスト、下部が短文・短編です。
35種類のイラストはMyasnikova NataliさんとAlena Solonshchikovaさんの作品です。