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サークルメンバー:小田島静流(seeds)の個人誌です
…ゲーム「幻想水滸伝」FAN BOOK。
「水辺」をテーマに「II」と「III」の短編小説を3編収録。
町を出て行った恋人を待ち続ける娘(「彼女のため息」)、湖畔で語り合う英雄達 (「折れた舳先の示す未来へ」)、戦いが終わった後、別れの挨拶を交わす城主と族長 (「もう一人の英雄」)――。水辺で語られる人々の思いを集めました。
※pixiv小説掲載分を若干ですが加筆訂正しています。
○オンデマンド印刷/表紙フルカラー/本文スミ一色
(試し読み)
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月明かりが照らす甲板に佇む小さな影に、ルシアはそっと笑みを浮かべた。
戦いの終わった夜。誰もが泥のような疲れに身を任せ、早々に休んでいるというのに、一人姿が見えなかった彼は、案の定この場所に来ていた。
「……眠れないのかい? ぼうや」
静かに近づいていって、声をかける。彼はびっくりしたように振り返ったが、声の主がルシアと分かって息を吐いた。
「なんだ、ルシアさんですか。びっくりしたなあ」
柔らかい茶色の髪をかきながら、彼は人懐っこい顔をルシアに向けてくる。
「どうしたんですか? 何か、ありました?」
この古城の主である彼は、どうにも心配性らしい。もっとも、彼に用がある人間は大抵、なにか問題事を抱えてやってくるのだから、これはもう習い性になっているのかもしれない。
(「もう一人の英雄」より)
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