舞台は年中雪の降りしきる町、雪町。庶民は町外に出ることのできない、完結された町。
町をめぐるバスの終点「丘の上のお屋敷」でともに暮らす三人の女の子たちが、ときに悲しみに出会いながら、誰かの優しさに触れながら、自分に向き合ったり、誰かに頼ってみたり、何かを信じたり、何かに気付いたり。
ひたむきに、前を向いて、日々を暮らしてゆく物語。
パティシエを目指しながら、喫茶店で働く結衣。
幼馴染みに寄せる想いに悩む、ショップ店員の蒼子。
隣町が見渡せるお屋敷の持ち主、香苗。
――彼女たちの物語がそれぞれ、オムニバスで綴られている一冊。
*掲載作品***
「雪町」
美味しい珈琲に定評のある純喫茶ブルーエへ、仕事帰りに立ち寄るのが蒼子の日課。
丘の上のお屋敷で待つ香苗のために珈琲豆を買ったり、そこで働く結衣を待って、一緒にお屋敷へ帰ったり。
結衣の視点から見た、三人の女の子の、楽しくて柔らかな日常のお話。
「蒼子ちゃんと香苗さん」
幼馴染の透太と喧嘩をした蒼子は、傷心のうちに、いつもは乗ることのない「丘の上経由」のバスに乗り知らない土地へと向かう。
そこで出会ったのは、丘の上のお屋敷に一人で暮らす香苗だった。穏やかな香苗の言葉に、蒼子の心はほだされてゆく。
「蒼子ちゃんとわたし」
香苗に勧められたお菓子教室で、蒼子は結衣と出会う。
お金がなくても、明るく屈託なく夢を語る結衣を見て、蒼子は自分もまた、今の仕事に夢を持っていたのだと思い出す。
「香苗さんと鱒谷さん」
自分の子供が予定より早く生まれると聞いて駆けつけた病院で、鱒谷は香苗と出会った。
少女の香苗は鱒谷に、生まれた子供への祝福を告げて去ってゆく。
数ヶ月後、病院で再会した香苗と鱒谷は、同じ境遇を分かち合う……。
「木町」
楽しかった日々から十年。丘の上のお屋敷を離れた結衣は、喫茶ブルーエを一人で切り盛りしていた。
そこへ訪れた鱒谷から、美しい本と三枚のチケットを渡される。
そのチケットは、木町へゆけるバスと観覧車の乗車券だった――。
***
誰かの優しさに触れれば、それは別の誰かの優しさへと伝わり、そうして優しさは連鎖する。
世界は優しさでできていて、それは……ひとかけらの悲しみで一層彩られる。
そんな物語を、あなたの手のひらへお届けします。
こちらのブースもいかがですか? (β)
Text-Revolutions準備会 午前三時の音楽 博物館リュボーフィ 藍色のモノローグ ザネリ 和菓子note 灰青 三日月パンと星降るふくろう またまたご冗談を! シアワセモノマニア